成し遂げる力
スズメバチの女王は鋭いアゴで木を削り取り、かみ砕いた繊維を唾液と混ぜ合わせて巣の壁を作る。基礎作りが終わると卵を産み、羽化した大量の働き蜂が様々な材料を運んできて壁を何層にも塗り固め、マーブル模様の巨大な円形の巣が出来上がる◆アリは日本に約300種、世界に1万種以上いる高度な社会性を発達させた生き物で、「地球はアリの惑星」とも呼ばれている。種類によって違うが深さ8㍍に達する複雑なトンネル構造の巣に数百から数万の部屋を持ち、数百万匹が生活するものもあるという◆渡り鳥のキョクアジサシは北極圏のツンドラ地帯から南極海域まで約3万2千㌔を飛んで往復する。生態に謎の多いニホンウナギは、日本沿海から2800㌔離れた西マリアナ海嶺付近で産卵した稚魚が長い遊泳の末に日本列島へたどり着き、河川を遡上して各地に生息する◆小動物が想像を絶する規模で自分たちの世界を生きているのと同じように、人類も地球上に壮大な文明社会を築き上げてきた。万里の長城や5千㌔に及ぶシルクロードの道端に佇めば、人間が長大な城壁や通路を営々と築き上げたことに感嘆の声を上げずにはいられない。今や宇宙への脱出さえ計画している◆大自然の営みは、小さな生き物にもあらゆることを成し遂げる力が備わり、力を合わせると無限大の成果が得られることを教えている。(形山俊彦)