仏法と国益
先頃開かれた中国人民政治協商会議で中国仏教協会の演覚会長が「宗教の中国化」の推進を力説したことは、一般紙でも報じられた。演覚氏によれば、この「中国化」は古代以来、歴史的に継続してきた過程の延長上にある。中国共産党と宗教団体の一時的で特殊な関係ではない、というわけだ◆ところで「宗教の中国化」に関連して、習近平総書記は「強国建設という大義に知恵を捧げ……、我が国の宗教の国際的影響力を拡大」するよう宗教界に促している。ロシアのキリル(=プーチン)氏が強調する「ルースキー・ミール(ロシア世界)」や米国トランプ前大統領の「偉大なアメリカの復活」などと考え方は同じである◆中国仏教協会は「中国化」の優等生である。演覚会長は今回の政治協商会議「優秀職務遂行賞」の一人に選ばれている◆日本での注目度はさほど高くはないが、この秋には身延山久遠寺を会場に「日中韓仏教友好交流会議」が開かれる。中国仏教協会元会長の趙樸初居士が提唱した「黄金の絆」に基づくもので、中国側には「国際的影響力の拡大」という国策の後押しがある◆テーマは「共同繁栄社会の構築における仏教精神――日中韓の調和と共生を祈る」だという。宗教の平和貢献が問われている中、3国の共同繁栄だけでなく、広く平和や人権などについても共同認識を築いてほしい。(津村恵史)