「自宅墓」供養を考案 墓じまい・寺離れ打開へ
三重県鈴鹿市 臨済宗妙心寺派龍源寺 松尾正堂住職

三重県鈴鹿市の臨済宗妙心寺派龍源寺の松尾正堂住職は、少子高齢化や家族形態の変化などによって墓を守り継承する人がいなくなり「墓じまい」や「寺離れ」などが進んでいる現状を憂え、その打開策として、自宅に遺骨を安置するオリジナルの「自宅墓」を考案した。全国どこに住んでいても僧侶による法事や年忌などを受けることができる寺院ネットワークの構築に取り組んでいる。
近年、樹木葬や散骨、合祀墓、手元供養など供養スタイルが多様に変化してきているが、自宅墓もその一つで、松尾住職の考案は「墓」「仏壇」「位牌」をコンパクトに一体化させたことだ。
基本となるのは分骨した遺骨を納める幅20㌢、高さ・奥行きとも8㌢の木製の納骨箱。この納骨箱をそのまま安置することもできるが、幅34㌢、奥行き27㌢、高さ48㌢の仏壇に納める「仏壇型」、幅38㌢、奥行き25㌢、高さ20㌢の卓上仏壇に納める「卓上型」を準備しており、それぞれの事情に合わせて導入できる。どのタイプにも故人の写真を陶板に焼き付けた遺影牌がセットになっており、オプションでお気に入りの仏具を選ぶこともできる。
これだけだと以前からあるものとあまり代わり映えしないが、松尾住職が重点を置くのは、業者の主導ではなく供養の専門家である寺院、僧侶がしっかりとサポートするということだった。
そのために東海地区の仲間の寺院に声を掛けて「自宅墓普及会」(本部=岐阜県関市・松見寺内)を立ち上げ、サポート体制を構築。さらに全国どこにいても地元の寺院の僧侶の仏事サポートを受けられるように「自宅墓ネット」として全国の寺院に加盟を呼び掛けている。
自宅墓の販売価格は、1霊位当たり15万~23万円で永代供養料も含まれている。購入者はネットワーク加盟寺院の僧侶から、年忌や彼岸や盆の諷経など折々の仏事のサポートを受けることができ、時間がたち自宅に安置することが難しくなっても指定する寺が引き取り、永代供養してもらえるという。
「この取り組みは従来の墓を否定するものではなく、選択肢の一つとしてこういう供養の形があることを提案するものです。墓じまいや寺離れが進む中、何よりも私たち僧侶が関わることが最も大切なことで、安心の提供にもなると思っています」
(河合清治)