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山中の荒れ寺を復興 週の半分は訪問看護師

大阪府茨木市 真言宗醍醐派僧侶 中川龍伽氏

宝池寺は大勢のハイカーにも親しまれるようになった。前列右から3人目が中川氏 宝池寺は大勢のハイカーにも親しまれるようになった。前列右から3人目が中川氏

真言宗醍醐派僧侶の中川龍伽氏(55)は5年前から大阪府内の山中にある荒れ寺の復興に取り組んでいる。「最初は雨漏りがして床にも穴が開いているようなありさまだったが、信者さんたちが手弁当で直してくださるなど少しずつ復興しつつある。口コミで祈祷やお祓いなどの依頼も増えるようになり、5人ほど弟子ができた」と話す。

寺は茨木市の竜王山(標高510㍍)にある宝池寺。奈良時代に雨乞いのため龍神を招請したのが起源で、境内の八大龍王宮が地元の尊崇を集めている。古来、修験道の行場でもあるが、現在は融通念仏宗に属する。

寺が荒廃したのは交通の不便さや無檀家に加え、融通念仏宗に修験道や密教に通じた僧侶が少ないことが原因で、中川氏は親交のある同宗の僧侶から請われて入寺することになった。

入寺以降、滝場や鎖場などを整備し、護摩祈祷や写経会なども地道に継続している。近年、山麓に新たに住宅地が造成されてハイキング客が増えたため、休憩所を設置。親しくなったハイカーのグループも複数あり、求められれば法話も行う。

「自然豊かなロケーションの中で気分を一新していく人が多い。私の弟子になった人も『宗教』を求めてやって来たというよりは、ここに来るうちに自然にそうなったという感じで無理がない。だからといって行が楽なわけではないが、この環境の中で凛としたものを吸収していけることが魅力だと思う」と語る。

中川氏は一般家庭出身で、看護師でもある。子どもの頃から僧侶に強い憧れがあり、35歳の時に縁ができた醍醐派の寺で3年間、修験道の修行をした後に得度した。

現在は週の半分を宝池寺で過ごし、もう半分は自身が大阪府和泉市で運営する訪問看護ステーションで医療活動に従事。また「自死に向きあう関西僧侶の会」の代表を務めるなど多忙な毎日を送っている。

活動の原点の一つに、得度直後にアルバイトの看護師として勤務していた老人ホームで看取った篤信の真宗門徒との出会いがある。宗旨は違うが、周囲に請われて精魂を込めて最期の読経を行うと顔つきがとても穏やかになった。

「いのちや宗教の現場はここにあるのかと思った」。実は得度当時、以後は僧侶に専念するつもりだった。「しかし、その時、何かが変わった。お坊さんであり、看護師でもある、このままでいいと吹っ切れて自然体で過ごせるようになった」とほほ笑んだ。

(池田圭)

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