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「私」が「魔女」になるまで ―「占い/おまじない」の役割とその変容(2/2ページ)

立教大兼任講師 橋迫瑞穂氏

2019年2月13日

『マイバースデイ』の「占い/おまじない」もまた、「手づくり」が介在することでその魅力を読者にアピールしていたといえるだろう。なぜなら、「白魔女」の理想像を学校生活に持ち込むことで、そこでの人間関係と正面から向き合う努力を価値づけることができるとされていたからである。さらに、「占い/おまじない」を「手づくり」する行為とその過程は、明るさ、ひたむきさ、優しさ、可愛らしさといった『マイバースデイ』が示す保守的な「少女らしさ」の内面化を促すものでもあった。また、「占い/おまじない」とセットになっている「魔女」のモチーフは、現実の困難を乗り越える指針を示すだけでなく、「少女らしさ」の価値を自明のものとし、強化する役割をも担っていたといえる。

他方で、2000年代に入ってからの「占い/おまじない」でも、「手づくり」と「魔女」のイメージは重視されている。ただし、それは1980年代のものと大きく異なる。例えば、2000年代における「占い/おまじない」を代表する西洋占星術研究家の鏡リュウジは、女性向けのファッション誌で「魔女」をモチーフにした「占い/おまじない」の手順を紹介している。そのなかには、『マイバースデイ』で示されたような、手順や材料を使用した内容も見られる。だが、鏡の記事で特徴的なのは、難しい専門知識を必要とする西洋占星術を読者が習得し、自らが占いを実行できることをアピールしている点であろう。特に鏡は、占いが個人の物語を形成するのに魅力的な方法であることを強調している。

そして、「占い/おまじない」のなかに「魔女」のイメージが取り入れられている。しかし鏡は、現代の女性たちはもはや遠くにある「魔女」の理想を追いかける存在ではなく、彼女たちがそのままで「魔女」なのだという見方を示している。そして、「占い/おまじない」は読者である女性が「魔女」として生きるための方法としても示唆しているのである。このように、今日の「占い/おまじない」は、「魔女」としての自分の物語を自分で形成し、それを拠り所として外へ向かって生きて行く準備という役割を担うようになった。

「手づくり」もまた改めて見直されるようになった。オカルトショップで「魔女」になるワークショップが開かれたり、海外から輸入したグッズが売られているのは、今日の「占い/おまじない」の「手づくり」の特徴を反映したものといえるだろう。そして、「占い/おまじない」に使われる材料や手順も、歴史的な経緯を背景にした本格的なものへと変化しつつある。

このような状況のもとで、「占い/おまじない」における「魔女」は手の届かない理想像としてではなく、「手づくり」を通して自分自身と重ね合わせるものであることが、さらに強調されるようになるのである。

1980年代の「占い/おまじない」が、少女たちに対して学校の人間関係に向き合う努力を促すものであったのに対して、今日の「占い/おまじない」は成人女性たちが生きづらい現実を生き抜く上で、自分を守り、そして強化するものへと変化したようである。そのなかで、「手づくり」は現実の困難を乗り越えるための「魔女」の理想像と自分とを結ぶものから、自分と「魔女」とを重ね合わせる行為へと意味が変わった。

ただし、今日の「占い/おまじない」においても、相変わらず美しさや優しさといった「女性らしさ」が強調されていることには注意しておきたい。現代の「魔女」たちが始めた「占い/おまじない」からは、ジェンダーやセクシュアリティーに関わる支配的抑圧的な価値観を疑い、これを攪乱しようとする、大きな流れはまだ見えてこないのである。

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