「無宗教」増加の意味 人生において宗教は重要か(6月25日付)
墓じまい、檀家離れなどうそ寒い言葉で代表される現代日本の宗教事情は世界共通の傾向を背景としている。「無宗教」の人々の増加がそれだ。
アメリカの世論調査・研究組織ピュー・リサーチセンターが公表した2010~20年の世界の宗教動向によれば、宗教的アイデンティティーに関する設問に対して「無宗教」または「無神論者」「不可知論者」と回答する人々(「無宗教者」として集計)は世界人口の24・2%で、10年間に1ポイント増加した。宗教区分ではキリスト教、イスラム教に次いで3番目に多い。
同センターによれば、無宗教者が人口の過半数を占める国と地域は、20年には10カ国・地域となり、10年前の7カ国・地域から増加した。日本は後者7カ国に含まれ、人口の約9割が無宗教者の中国、68%のベトナムに次いで、日本は56%と3番目に無宗教者の比率が高い。しかも10年間で5ポイント増加している。
むろん、同一の基準、調査の設問で様々な国の市民の宗教性を比較する適切性には限界がある。周知のとおり、『宗教年鑑』が調査対象団体の自己申告をベースとして計上する宗教信者数の総数は毎年毎年、日本の総人口を上回る(令和5年版によれば1億6299万人)という異常な数字だ。どう見ても無茶な話だが、重層信仰の反映として説明できるので、まるっきり意味がないというわけではない。
例えば、同センターの23年の調査では、日本人の46%が仏教徒を自認し、64%が自然の中に神や目に見えない霊的なものの存在を信じると答えており、宗教的伝統は今も息づいているともいえる。
問題は同年の調査にも表れている宗教の人生における「重要度」の低下で、人生において宗教が非常に大切と答えた日本人はわずか6%であった。そうした中で、特定の宗教組織への帰属意識低下が進んできたのは不思議ではない。
今回の10年間の推移調査で、日本の仏教徒は700万人減少した。同期間の総人口減少(約180万人)を上回るスピードだ。同センターも指摘するように高齢者が多い自覚的な信者の自然減もあるが、特定の宗教団体からの離脱(あるいは帰属意識の消滅)が進んでいるということだろう。
ところで、上記の「重要度」低下は、世俗社会だけのことだろうか。「ゆでガエル」の譬えもある。宗教界の内部でも、世俗化とともに宗教的価値の重要度低下が徐々に進んではいないか、改めて足元を見直すべきではないか。