無知故のマナー違反 備えによりて憂いを減らす(9月19日付)
コロナ禍で急激に落ち込んだ外国人観光客が2023年以降かなりの勢いで増加に転じた。25年は年間4千万人を超えるのではないかと予測されるまでになった。
観光客の少なからぬ人たちが、神社や仏閣その他の宗教施設に足を運ぶ。日本の宗教施設に親しんでもらうのは喜ばしいが、観光客の迷惑行為に悩まされる例が増えている。迷惑系ユーチューバーと呼ばれる人たちもその中にいて、あえて周囲の顰蹙を買うようなことを繰り返す例もあるようだ。
多くの観光客は常識的に振る舞うが、知らずしてやってしまうマナー違反には、事前の告知の機会をもっと増やすことを考えるのが得策である。鳥居や絵馬がどういう意味を持つのか。鐘はどういうときに用いるのか。拝礼するなら、どのようにしたらいいのか。
逆に日本人がキリスト教圏の国で教会に行ったときや、イスラム圏の国でモスクに行ったときに、どのように振る舞うべきかを、誰もが適切に心得ているとは言い難い。お互いに生まれ育った国の主たる宗教文化とは大きく異なる国を訪問する機会が、著しく増えているのが現代である。
ごく少数の外国人のマナー違反なら、気にする人もあまりいないかもしれないが、これだけ多くの外国人が他国の宗教施設を訪れる時代、それを想定した準備を本格的にやるべき時期に来ている。
この作業は個々の宗教施設の能力を超える。例えば様々な注意事項を幾つかの外国語で示すとなると、それなりのスタッフがいないと無理である。何について注意を促すかも難しい。少なくとも宗派なり、教派なりの単位での対処が適切であろう。様々な困難はネットワークを形成して対処すべき時代になっている。
宗教施設においてマナー等について告知するだけでなく、ネット上にも複数言語で必要な事項を告知する方法がある。知った上であえて迷惑行為をするような人に効果はないだろうが、単に知識不足でマナー違反を犯す人を減らすには効果があるのではないか。
迷惑系ユーチューバーなどあえて迷惑行為を行うような人たちには、それなりの対処法も考えておく必要がある。他人の迷惑を考えないだけでなく、迷惑をかけることを楽しむ人がどこにでも一定数いると考えられる。大目に見ることが、迷惑行為を繰り返す人たちを増やしてしまう可能性もある。
さらに、無知故のマナー違反は外国人観光客だけでなく、日本人観光客にも当てはまるようになってきている。対策は何事も早めに適切に行うのが好ましい。