盆行事と葬墓習俗の伝承と変遷 ―民俗学の視点と方法―…関沢まゆみ著
全国各地の盆行事と葬墓習俗の変遷や地域差について、これまで蓄積されてきた調査情報を緻密に分析し、日本人の霊魂観の変化を明らかにするとともに、柳田國男や折口信夫が創成した民俗学の比較研究の有効性を証明しようとする一冊。両墓制や埋葬地選び、土葬から火葬への移行、葬法などに着目し、日本における盆行事や葬送儀礼の在り方の変化や地域差の意味を考察する。
民俗学を築いた柳田やその門下の折口は、民俗学の研究において、比較研究が重要であると強調している。しかし1970年代後半以降、このような柳田や折口の方法論は否定され、その有効性が検証されることはなかった。著者は、改めて柳田・折口が示した比較研究の重要性を指摘する。盆行事と葬墓習俗に関する各地の伝承を分析することで、民俗学における比較研究の有効性を示す。
本書の特徴は、これまで年中行事の枠組みで捉えられてきた盆行事と、人の一生や家・家族との関係という視点で語られてきた葬送儀礼を一連のものとして分析する点にある。人の死、葬儀、墓、霊魂祭りとしての盆行事と、それに付随する邪霊祓えの民俗を総合的に検討していく。また近年の葬送儀礼の変容に注目し、日本人の霊魂観の変化を明らかにする。
定価9900円、吉川弘文館(電話03・3813・9151)刊。



