柳宗悦 無地の美学…佐々風太著
美と宗教の関わりを思索した宗教哲学者・柳宗悦(1889~1961)は「民藝運動」をけん引した人物としても知られている。著者は、中外日報社第19回涙骨賞の奨励賞受賞者であり、受賞論文「『用いる』ことをめぐる柳宗悦の思想」も本書には組み込まれている。
先行研究で明確には主題とされてこなかった柳の「無地」を巡る思索について、一般的な文様の有無で分類されるものではないことを確認した上で、柳が無地と呼んだ造形や言説について時代を追って参照しながら、その内在的な理解を丁寧に掘り起こし「無地の造形という物質的な領域を通して宗教的な絶対性を感得していく」という柳の思想の独自性を浮かび上がらせる。
著者は「なぜ無地の美が重要なのか。それは、柳の見るところ、美しい無地は、作者の意図せざるところに成立するものであり、それを見出す者と作者の深い相互関係を示唆するものに他ならなかった」と結論付ける。だからこそ、それを計画的に再現しようという作為への柳の厳しい批判にもつながったと解説。器物論やデザイン論としてだけでなく、柳が晩年に構想した「仏教美学」の射程や作り手と鑑賞者の関係性を巡る議論にとっても示唆に富む論考となっている。
定価3300円、専修大学出版局(電話03・3263・4230)刊。






