PR
購読試読
中外日報社ロゴ 中外日報社ロゴ
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
新規購読紹介キャンペーン

文明の効用 利便性から何が得られるか(12月10日付)

2025年12月12日 09時13分

与えられた肉体的機能を駆使して活動する能力を持って生まれてきた人間は、その能力を代行する技術を発明開発し、余った時間と力を新しい活動に使う生活を我が物とした。その技術力は、例えば本来持っている機能が衰えた時に、それを補うものとして活用される。私たちの日常生活は、こうした文明の利便性の上に成り立っている。だが、文明の効用を追求することが、どれほど人生の生きがいに通じているのかを時に立ち止まって考えてみることも必要ではないだろうか。

文明の効用は利便性にある。あるいは利便性や効率性、快適性を追求することで文明は発達してきた。身の回りの家電製品、自動車や列車、携帯電話などの通信機器等は便利な生活をもたらし、人や物を遠くまで運び、世界と情報交換することを可能にした。無人航空機のドローンが軍事技術の民生転用であるように、壮大な現代文明の背景に戦争があることも忘れてはならない。

本来持っている能力が働いている間は自分の力を使って生活すればいいようなものだが、科学技術で代行される文明の利便性を一度味わってしまうと、それを手放すことはできなくなる。かといって文明の発達で人間の本来的な能力が後退したわけではない。長い人類の歴史が物語るように、文明がもたらす新たな環境に適応するための調整にも人間は不断の努力を重ねてきた。

こうした問題を身近な生活の上で考えるとき、様々な状況が見えてくる。例えば足腰の衰えた人にとって、高い山の上にある寺社に参詣するために長い階段を上ることは困難であり、不可能となる。それならエスカレーターを設置すれば、誰でも大した苦労をせずに参詣できるだろう。多くの人に分け隔てなく利益を施すという宗教的な目的意識からして、文明の恩恵を施すことは極めて有益な社会貢献であり、利器大いに活用すべし、ということになる。

だが一方で、参詣すべき聖域が山上に構築されたのには理由があるはずだ。それは足腰の不自由な人を拒むためではなく、容易に近づくことのできない場所にこそ人が求めるべき意味が存在するという宗教的な含意として理解されるものではないか。由緒のある寺社は、急な階段や険しい道が続く参道にエスカレーターを設置すべきかどうかという現代的な課題を抱えている。しかし利便性のみを基準にして答えを求めても正解が得られるとは限らない。利便性から何が得られ、何が得られないのかを改めて考えなくてはならない。

縮小の中の成熟化 高齢宗教者の出番(1月23日付)1月28日

現在、日本における65歳以上の高齢者は約3600万人、人口の約3割に当たる。厚生労働省の推計によれば、2070年で高齢化率はピークを迎え、約4割の水準になるが、この時には…

AI進化の先に 心と深く関わる領域を担う(1月21日付)1月23日

AI(人工知能)の活用領域は急速に拡大している。このことが人類の未来に何をもたらすのかを考える必要がある。サイエンス作家でZEN大学教授の竹内薫氏は「AIはこれからさらに…

故郷の大切な記憶 震災被災地で写真保存(1月16日付)1月21日

能登半島地震から丸2年。甚大な被害があった石川県珠洲市に昨春オープンした「スズレコードセンター」は失われつつある奥能登の風土、文化や風習、災害の教訓を記録する施設だ。若い…

2023年8月9日の原爆ミサでPWNWの発足宣言を読み上げる中村大司教(中央)ら

核兵器廃絶へ保有国非難 禁止条約発効5年で声明 長崎・広島などの日米4司教区

ニュース1月28日
長者杖を受け取る中村座主

真言宗各山会新年総会 中村座主に長者杖 来年大阿は長谷寺・川俣氏

ニュース1月28日
牧野秀成宗務総長

宗務総長に牧野氏 宗祖750遠忌へ準備 法華宗陣門流

ニュース1月28日
「墨跡付き仏像カレンダー」の製造販売は2025年版をもって終了いたしました。
長らくご愛顧を賜りありがとうございました。(2025.10.1)
中外日報社Twitter 中外日報社Facebook
このエントリーをはてなブックマークに追加