イランの民族楽器サントゥールを演奏する 谷正人氏(54)
イランの民族楽器サントゥールを現地で学び、演奏活動と音楽学の研究を両輪で進める。サントゥールは、台形の木材(共鳴胴)に張られた72本の弦を打つ打弦楽器。先端をフェルトなどで巻いた細いバチを両手に持ち、弦をたたいて音を奏でる。師から直接学び、体で覚えて演奏するサントゥールを通じて、イラン文化の歴史と精神性を伝える。
磯部五月
サントゥールとの出合いは。
谷 大阪音楽大在学中にイラン音楽と出合い、2年の終わり(1993年2月)に、初めてイランに行きました。民族音楽をしていると「あやしく」見られることもありましたが、私はサントゥールを究め、現地で大学を卒業したいと計画しました。
日本からは79年のイラン革命以前に渡った研究者はいましたが、90年代初頭のイランはイラン・イラク戦争の後で日本人留学生の数も多くありませんでした。大使館も留学手続きは分からない状態で、煩雑でしたがなんとか準備を整えました。
当時はインターネットもなく先入観を持たずに飛び込みました。言葉も分からない中で、誤植も多い紙の辞書を引きつつ、身振り手振りで乗り切りました。ホームステイ先の家族はとても親切でした。入学試験に向け、テヘラン大の語学学校で1年間、ペルシャ語を学びました。それ以外の時間はプロ野球のキャンプだと思って楽器のレッスンに明け暮れました。
イランはどんな国ですか。
谷 昨年末から混乱が続いており、イランへの渡航がかないませんが、文化的にはとても豊かな国です。イスラム以前の歴史的な厚みもあり、様々な背景を持つ人々がいます。
詩を朗唱する文化があります。サントゥールは歌と一緒に演奏されることも多いため、ペルシャの古典詩の世界観はもとより、その韻律が音楽のリズムにも影響を与えています。
イランの人たちは、人なつっこくてホスピタリティー豊かです。日本での報道とは違う印象を抱かれると思います。礼儀正しく、日本にはない社交辞令もあります。先生が教室に来られたら皆が立ち上がって迎え、先生から「どうぞ」と声が掛かってから座る。タクシーや街の商店であっても金銭のやりとりを一度は断ります。金銭を当然の対価として受け取ることは、卑しい振る舞いと考えるのです。
気候は日本より乾燥していて四季があり、果物もいろんな種類があります。皮の薄い、甘レモンも冬の味覚です。輸送すると味が変わってしまうそうで、イラ…
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