妖怪研究の地平を切り開いた第一人者 小松和彦氏(78)
「妖怪は迷信ではなく日本文化を読み解く鍵です」――埋もれた妖怪文化を再発見し「妖怪学」を確立した。京都市西京区の国際日本文化研究センター(日文研)で共同研究を立ち上げ、中心的な役割を担った。妖怪は現代文化の源泉にもなり「人間の心理や喜怒哀楽を映す鏡です」と語る。
椎葉太貴
妖怪とはどのような存在だと考えていますか。
小松 妖怪は体験談でその存在が語られるだけでなく、文学、美術、芸能、漫画やアニメなどにも存在しています。お寿司の「かっぱ巻き」やお酒の「鬼ころし」といった言葉に象徴されるように、生活にも入り込んでいます。そう考えると妖怪は日本文化として捉えることができます。妖怪は迷信や撲滅すべき存在ではなく、日本の文化史や現在の大衆文化を考える上で重要な要素だと思います。
妖怪は自然界に存在するだけでなく、人間の想像によって生み出される存在でもありますね。そのように考えるようになったきっかけは道具が付喪神になる事例です。全てのものに霊魂が宿っているという日本独自のアニミズムが背景にあります。動植物など自然に由来する妖怪だけではなく、人間が生み出した妖怪もいるところに日本文化の特徴が見えてきました。
新しい道具が生まれれば新しい妖怪も生まれてくるように、妖怪は絶えず創り出されます。江戸時代には娯楽のために人間が想像力を駆使して多くの妖怪を生み出しました。漫画家の水木しげるさんもアニメ監督の宮崎駿さんも妖怪を創り出していますね。
妖怪研究にどのように取り組んできましたか。
小松 幼少期はお化け映画などに触れており、妖怪に興味を持っていました。大学に入って文化人類学と民俗学に出合い、妖怪が研究対象になると分かりました。憑き物、狐憑きから研究を始めました。
妖怪は様々な領域・分野にまたがる日本文化です。一人では研究できないと思い、共同研究の必要性を感じていたところ、梅原猛さん(日文研初代所長)と河合隼雄さん(2代目所長)から「日文研は共同研究ができるし来ないか」と誘いがあり、1997年に日文研に来ました。
日文研では妖怪研究の「旗振り役」として、妖怪の入門書や事典を制作し、怪異や妖怪に関する伝承や画像をデータベース化して広く公開しました。美術館や博物館で妖怪の展示が行われ、さらに海外からも注目されています。
埋もれていた文化を発掘し学問としての枠組みを整え、国内外に発…
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