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中外日報社「宗教文化講座」

現代人の脆弱性 集いの場から「共感力」が育つ(5月22日付)

2026年5月27日 09時19分

ソーシャルメディア(SNS)の未成年利用を巡る規制強化が各国で進んでいる。ポイントの一つは、子どものSNS利用による依存やメンタルヘルスへの影響であり、また生成AI(人工知能)の登場によるリスクの多様化にある。年齢制限の検討・導入を具体化する上で、プラットフォーム事業者がどのような判断と対策を講じているのかが問われている。

SNSの利用という新しいコミュニケーションスタイルの最大の特徴は非対面性にある。人と人とが対面して意思を伝達する直接的なコミュニケーション以上に間接的なコミュニケーションの場面が増えて、対面で会話しながら会食する機会も減っているのではないか。デジタルネーティブと呼ばれる世代ほど、そうした現実が日常化しているように思われる。

現代の環境問題は文明が自然界に及ぼす影響といった観点で論じられる。しかし、自然環境に適応しつつ生存を維持してきた人間の側から見れば、人間もまた環境の変化から様々な影響を心と体に受けていると考えられる。間接的なコミュニケーションの増大、スキンシップの減少など、生活環境の変化が日々の社会活動や生活文化に与える影響だけでなく、感性や理性に及ぼす影響についても注意深く観察しておく必要がある。

ゴリラ研究の第一人者として知られる人類学者の山極壽一氏は、人間社会が「サル化」しているのではないかと指摘し、現代社会への危機感を表明している。類人猿であるゴリラやチンパンジーは人間と同じ仲間であり、サルの仲間ではない。類人猿とサルとの最も重要な違いは、サルは仲間の気持ちを理解できても同情できないところにある。強いサルはエサを独占し、弱いサルに分け与えたりしないのに対して、ゴリラやチンパンジー、ボノボは、強いものが弱いものに分配する。この結果、人間と同じく車座になって食事をする光景が生まれたという。

山極氏は、集団活動や社会的な複雑性への対応が希薄になったところに現代人の脆弱性と共感能力の低下が見られ、その原因がインターネットと孤食にあると考えている。見えない相手と瞬時に知り合え、欲しい情報や知識が手軽に手に入る利便性を得た半面、家族や仲間と一緒に食卓を囲む時間を失い、自己のアイデンティティーを示しながらコミュニケーションを図る共感力や信頼関係が希薄化したということだ。人間が本来持つ「共感力」が集いの場から育つというなら、地域共生の場として存在してきた寺院や神社の役目は極めて重要だということになる。

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