お墓事情の急速な変化 改葬手続きの経験から
東京科学大教授 弓山達也氏
6月初旬に相愛大学で開催された「宗教と社会」学会ではムスリム墓地やポストコロナ葬送など、墓や葬儀に関する報告が目立った。中でも和栗隆史氏の「『墓じまい』における死者の行き先」は、現在、墓じまいを進める当事者として興味深く聴くことができた。
厚生労働省が年間改葬件数15万を公表した2022年から、この数字は地方の墓がどんどん閉じられていくイメージとしてとらえられてきた。和栗氏によれば、15万件は墓じまいの数ではなく、その墓のお骨の数で、またかなりの割合が同一墓地内の永代供養墓、樹木葬などへの移動だという。和栗氏の調査は寺院を対象にしたもので、行政の統計と照らし合わせて検討したい。ただ彼とやりとりする中で、地方自治体によって改葬の手数料も申請書類も異なることも判った。
そうこうするうち我が弓山家の墓じまいとなった。愛媛県の共同墓地で管理者不在で、祖父の代で分家して寺院とのつきあいもなく、相談できる親類もおらず、何年も前から墓じまいの話は出ていたものの、実行に移せないでいた。強く墓じまいを望んでいた母の他界に際して、その願いをかなえるかたちで子らが動くことになった。所在地付近の寺院や市役所に電話をかけ、管理者がいない共同墓地からの改葬の申請の仕方を聞くとともに、相談は仏壇店や石材店が頼りになるという情報をつかんだ。電話では墓地の場所も墓やお骨をどうするのかも、業者とも、子らの間でもイメージが共有できず、現地での事前打ち合わせが必要であった。
並行して都内の樹木葬墓地を購入し、移転先も確保した。市役所も業者も同様の事例を多く扱っているようで慣れた感じで指示を出してくれた。市役所への手続きは、お骨1柱につき300円の手数料と、移転先墓地の許可書、現墓地の地図など数枚の書類を郵送することで済んだ。閉眼供養は業者が僧侶を紹介してくださり、お骨は業者と筆者が一部を袋詰め、残りは墓地内に撒くことになった。新規の墓が建立されることはなく、墓石を撤去した後も、その場所はお骨が眠る場として残るという。それを聞いた妹が目印にと、海岸から大きな石を拾ってきて置いた。お骨は予想通り濡れていて、筆者が宿で乾かし、持ち帰った。
閉眼供養からお骨の袋詰めまで1時間ちょっと。妹とずいぶん長い時間をかけて迷い悩んだが、あっという間だったねと笑いあった。業者が、ここもあそこも墓じまい、そうでなければ放置され雑草どころか立木も生えて大変ですよと教えてくれた。確かに十数年くらい前までは、どこも綺麗にしていた墓地が虫食い状態だったり荒れた状態になっていたりしていた。
講義では学生に信仰している自覚もなく教団所属意識もないのになぜ墓参りをしたり、初詣に行ったりするのだろうと問うと、それなりに議論ができる。やがて「墓参り?行かないんですけど」と学生が言う時が来るのだろうか。ある樹木葬墓地で従来の檀家よりも新規契約信徒の方が寺の行事に積極的だと聞いた。墓じまいをしても、やはり墓や仏壇に手を合わせるのだろうか。当事者の宗教研究者も即答できないでいる。







