「死への援助」法可決 安楽死容認の動きへの懸念(7月29日付)
フランス国民議会(下院)で15日に「死への援助」法案が可決された。18歳以上の人に医師らが自殺ほう助を行うことを容認するもので、意図的に死をもたらす積極的安楽死を導入するものだ。賛成が291票、反対が241票だった。
すでにオランダ、ベルギー、スペイン、カナダ、ニュージーランドなどで積極的安楽死が合法化されている。英国議会下院では、2025年6月に「支援を受けた死」を認める法案が可決し、賛成314票、反対291票だった。英国の法案の場合、余命6カ月未満と見込まれる人に限定されているが、賛否が拮抗しており、いつ実施に至るか分からない。いったん安楽死や自殺ほう助が容認されると、厳しい限定が次第に緩み、対象者の範囲が広がっていく傾向があることが知られている。
反対する人たちは、障がいや重い病気があり支援を受けて生きてきた人たちが、心ならずも死を選択するような場合が増えるのを懸念している。法律が死を選択することを促すことになり、弱者への支援が軽んじられる効果が生じることだ。
実際、経済先進国では、高齢者や重病の人、障がい者への医療・介護の負担が国家財政を圧迫していると話題になることが増えている。コロナ禍では限られた医療資源を優先順位をつけて用いること(トリアージ)が議論され、場合によっては必要な医療措置を施さない人が出るのを認めることについて論じられもした。
折しも重い障がいのある人々が暮らす相模原市緑区の施設で、元職員が19人の障がい者を殺害した事件から26日で10年たった。犯人は障がい者に話しかけて応答できない場合、人間として生きている意味がないとして殺害していった。犯人は以前から、社会の負担を減らすことで、多くの人が生きていく上で利益があるのだから重度障がい者は安楽死させるべきだと主張する文書を衆議院議長や首相に渡そうとしていた。
その背後には、生産性がなく社会に負担をかける人々は存在価値がないという考え方がある。犯人は多くの人が実際はこの考え方を是認しているのに言わないでいるだけだとし、自分は勇気を持って社会を変えるのだと主張し、不法移民排除を唱えるトランプ大統領を称賛してもいた。
安楽死容認は耐え難い苦しみの中にある人への福音だという考えがある一方、安楽死容認は人のいのちの尊厳を脅かすものだという考えもある。人々がじっくり考えるというプロセスなしに事を進めるようなことはあってはならない。







