失われる伝統
〈コラム〉風鐸2026年9月2日 11時38分
都内のニュータウン地域の住職から「戒名はいらない、故人の俗名や生前に自作した戒名で弔ってほしい、などの要望は以前からあったが、位牌自体を作らないというお宅が増えてきた」との声を聞いた◆仏壇保有率の低下や伝統的な供養の形の変化などが要因として考えられる。団塊の世代の葬儀が多くなる中、移住者であるが故に菩提寺との縁が薄く、急増する家族葬では何かと口うるさい田舎の親族が参列することもない。また、位牌の存在が子ども世代の負担になるのでは、という親心も影響してのことだろう◆担い手不足で休止に追い込まれる祭事や伝統文化は珍しくなく、コロナ禍が事態を加速させた。再開しようにも、ノウハウはあっという間に失われ、なぜ行う必要があるのかの説明すらできなくなってしまう◆昔話のように「先祖供養というものがあったらしい」と語られる時代もそう遠くはないかもしれない。「死別などを通じて少しずつ涵養されてきた宗教心、宗教文化が深刻な危機にひんしている」という住職の嘆きが杞憂であればよいのだが。(佐藤慎太郎)









