「地震工学」の生みの親 土岐憲三氏(87)
最大震度7の熊本地震が7月28日に発生し、大きな被害が広がった。各地で地震が頻発する中、南海トラフ地震など巨大地震への備えが改めて問われている。地震災害の専門家として京都大などで長年活躍し「地震工学」という語の生みの親にもなった。寺院と防災の関係や南海トラフ地震について、また異分野の人々が協力する「人融知湧」の信念を語る。
田代文成
地震工学とはどんな学問でしょうか。地震学との違いは。
土岐 地震学は地震そのものを研究する理学の学問で、地震工学は地震による被害を抑えるため、建物などの構造を研究する工学の学問です。昔は「耐震工学」と呼ばれていました。
建物を頑丈にする耐震だけでなく、揺れを伝わりにくくする免震の考え方が重要になりました。そこでより実態に合った地震工学という名称にしようと、東京大や京都大の研究者が集まった際、私が提案しました。
地震工学の道に進まれたきっかけは。
土岐 京都大を卒業し大学院へ進学する際、この分野に進むことになりました。当時は地震災害の研究者が少なく、1966年に博士課程を修了するとそのまま助教授になりました。27歳くらいでしたね。昨日まで学生だったのに翌日から教壇に立つことになった(笑い)。そういう時代でした。京都大で教授を務めた後は立命館大へ移り、近年は「都市防災」をテーマに研究しています。
強く印象に残った地震はありますか。
土岐 子どもの頃に経験した昭和東南海地震と昭和南海地震ですね。「家が崩れるかもしれない」と冬の寒い中、屋外で布団にくるまって寝たことを覚えています。
95年の阪神・淡路大震災の時は偶然、大阪で日米の地震学者によるシンポジウムが開かれ、私も基調講演をする予定でホテルに宿泊していました。その朝に地震が発生し、シンポジウムは中止。急きょ現地調査に切り替わりました。地震学者ということで新聞社の依頼を受け、ヘリコプターに乗って上空から被害状況を視察したことも印象に残っています。
近年、南海トラフ地震の発生が懸念されています。
土岐 世間では「〇年以内に起きる」といったセンセーショナルな見出しが目立ちます。しかし、実際に分かるのは千年単位で見た発生傾向です。100年程度の周期性はありますが「〇年以内」と言い切れるものではありません。「〇年以内」と断定する予測は無責任です。当たるも八卦、当たらぬも八卦では困ります。地震は予知で…
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