支援の格差是正を 需要と供給のミスマッチ(8月21日付)
熊本地震などの被災地では、全壊した建物が多い地域に報道が集中し、支援先についてもメディアへの露出が高い地域が優先されがちだ。今回、被害が大きかった宇城市豊野町は、民家が点在するため被災状況の全体像が把握しにくく報道も少ない。そうした地域で住民支援の拠点となっているのが、真宗大谷派の光照寺である。糸山公照住職は「10年前もそうだったが、全壊の住宅が多数ある『絵になる』地域に報道と支援が集中する」と嘆く。
被災地のニーズは刻々と変化する。断水が続いている時には2㍑のペットボトルや大きな容器に入った飲料水が求められる一方、断水が解消されれば、小さく持ち運びやすいペットボトルが重宝される。支援する側の善意だけでは、必要な場所に必要な物資を届けることは難しい。
浄土真宗本願寺派本願寺熊本別院に設置された支援センターの工藤哲修氏によると、令和2年7月豪雨での経験を踏まえ、今回は物資の受け入れ方法を改善したという。豪雨の際には「着るものがない」との報道を受けて大量の衣類が寄せられ、同センターではさばききれないほどになった。その教訓から「物資を送る前に必ず電話してほしい」と呼び掛け、必要な物資だけをホームページに掲載。充足すれば速やかに掲載を取り下げることを徹底している。工藤氏は「今回はニーズに合ったものを送ってもらえている」と話す。
山門や鐘楼が全壊するなどの被害を受けた同派勝明寺(八代市)の木下明水住職も、被災者が求める物資が届かない「需要と供給のミスマッチ」を感じた一人だ。そこで木下住職は、生成AIを活用し、同派の寺院関係者だけが利用できる独自の情報共有アプリを開発した。人的・物的支援の要請や、どこから何を供給できるかといった情報を共有でき、ミスマッチを防ぐのが狙い。今後もアップデートを重ね、災害時への備えとして宗派に提言していくという。
宗教界のネットワークは、全国に張り巡らされている。災害が発生すれば、各教団や寺院を通じて被災地に様々な支援が振り向けられ、災害が多発する近年、その動きは迅速になっている。しかし、支援の手が届きにくい地域が生まれることや、必要な物資と実際に届く物資のミスマッチは、なお解消されていない。被災地の「支援の格差」をどう把握し、必要とされる支援を必要な場所へどうつなぐか。
全国に広がる宗教者のネットワークを、支援を届ける仕組みだけでなく、支援の偏りを是正する仕組みとして生かすことが求められている。






