楽しく研究できる場に
浄土宗総合研究所 本庄良文所長(75)
4月に浄土宗総合研究所(総研)の所長に就任した。ちゃめっ気たっぷりに冗談を飛ばしたかと思えば、要所では迷いなく自らの考えを語る。専門は仏教学と浄土学。佛教大や神戸女子大の教壇に立った。
京都府八幡市の自坊・安心院に生まれた。思春期には僧侶や寺院の在り方に反発し、対極にあると感じた原始仏教に憧れた。「僧侶の父の下になぜ自分が生まれたのか」と考えたという。増谷文雄氏の『仏教百話』『原初経典 阿含経』や中村元氏の『ゴータマ・ブッダ』を愛読した。
京都大に入り、さらに大学院へ進学したが修士論文で挫折。茫然自失の中で手を伸ばしたのが、仏教学者・櫻部建氏が周囲に勧めていた『倶舎論』の註釈書『ウパーイカー』の翻訳だ。
「チベット語訳しか残っておらず、一生かかるとも言われたが誰もやらないことをやりたかった」と語る。翻訳は精読そのもの。丁寧に読めば発見があり、それが研究につながる。2014年に全訳を刊行した。
好きな言葉は「自利利他」、尊敬する人は「みんな――あなたもですよ」と記者に笑いかける。
神戸女子大に奉職していた当時、阪神・淡路大震災で教え子を亡くした。遺族が教え子の友人にかけた「一緒にいなくてよかったね」という言葉が胸に残る。以来、年回忌には遺族へ花を贈り続けている。
総研の強みは、浄土宗が現代社会にどう役立てるかを探究する点にある。研究成果の還元も重要な使命だ。「みんなが楽しく、正しく、仲良く研究できたらいいな」とほほ笑む。
(椎葉太貴)







