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宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
中外日報社「宗教文化講座」

遠きふるさと

〈コラム〉風鐸2026年7月2日 10時43分

実家の近所の共同浴場の番台にここ数年、父親が座っているそうだ。こぢんまりとした住民向けの浴場だが、源泉かけ流しでかなり湯温は高め。風呂釜の調子が悪いと家族連れ立って足を運んだことを思い出す◆第29代欽明天皇の皮膚病を癒やしたと伝わる温泉で、中世の『大和物語』『拾遺和歌集』にもその名が見え、伊達政宗も湯あみしたとか。昔に比べると市街地からのアクセスが格段に向上し、大型宿泊施設が林立。多くの入浴客や観光客を集める温泉街となった◆学生時代、市町村合併前に編まれた町史をひもといてみたことがある。奥羽山脈を越えて太平洋側と日本海側を結ぶ古い街道に沿って形成された集落の故か、慈覚大師開創の寺院や修験の霊場、平家の落人伝説、中世の城館跡、かっぱや首切地蔵の民話、豊作祈願の民俗芸能などの宝庫であったことに驚いたものだ◆室生犀星は「ふるさとは遠きにありて思ふもの」と郷愁を詠んだ。この「遠き」とは単純な空間的距離だけでなく、離れていた時間をも含む心理的な隔たりのことでもある。だからこそふるさとは特別な空間として想像され、その思い出はいつしか自身の原点にもなっている◆いつまでも変わらないと思っていたふるさとから、メガソーラー関連施設が里山を切り開いて建設されるとの噂が聞こえてきた。遠きにありて思うのは、ただ悲しさばかりか。(佐藤慎太郎)

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長らくご愛顧を賜りありがとうございました。(2025.10.1)
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