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戦犯者の叫び 戦争の不合理を繰り返すな(7月8日付)

2026年7月10日 09時14分

敗戦後80年の節目といわれた昨年から一年が過ぎる。戦争の記憶から年を追うごとに遠ざかる一方、世界各地で新たに引き起こされる戦争で数限りない人々が死と抱き合わせの悲惨な現実の中に押し込められている。戦争のない世界を求める声は世界中に満ちているはずなのに、戦争はなくならない。戦争の火ぶたを切るのは一体誰なのか。政治的な力を持たない民衆が国家レベルの戦争を始めることはできないはずなのに。

巣鴨拘置所は戦後、GHQに接収され巣鴨プリズンと呼ばれた。そこで裁かれ処刑された戦犯者は60人に上る。A級とBC級に分けられた戦犯者たちの初代教誨師となった東京帝国大助教授で浄土真宗僧侶の花山信勝氏は、東條英機ら7人のA級戦犯が1948年の年末に処刑された後、辞任。そのあとを大正大教授で真言宗豊山派僧侶の田嶋隆純氏が引き継ぎ、BC級戦犯の教誨に当たった。

田嶋氏は53年、教誨師としての体験を一冊の本にした。同書は昨年『巣鴨プリズンBC級戦犯者の記録―わがいのち果てる日に―』のタイトルで講談社学術文庫から復刊した。その中に田嶋氏は「我らの轍を踏むな」と叫んだ戦犯者たちの血を吐くような絶叫を書き留めつつ、戦争の不合理を二度と繰り返すべきではないと強く訴えている。

「戦争は破壊であるが故に、一切の不合理が合理化される。勝者も敗者も『不合理』を強要するのが戦争である。この現実の地上で、戦争こそは不合理の母体である。もし人類が合理を愛するならば、二度と再びこの不合理を繰り返すべきではない。『我らの轍を踏むな』――とは、彼らの血を吐く如き絶叫であった」。戦争が全てを合理化するとは、非常事態下(戦時下)の「命令」が不合理も理不尽も全てを「合理化」したのと同じく、勝者の「悪」もまた「善」に帰せられてしまうことを意味している。

田嶋氏は、戦犯者の苦悩と罪業感に接して「『世間虚仮、唯仏是真』の思いを深めずにはいられなかった」と吐露している。彼らの無念は国を挙げて争う戦争に立ち至った結果が個人の罪に帰せられることにあった。また、勝者のみが敗者を裁くことへの割り切れなさであった。「それ故に彼らは、勝者と共に神の前で裁かれんことを渇望していた」し「この人らは、決して自らの『善』をもって抗弁するのではなく、自らの悪をお互いに曝け出し合いたかったのだ」と書いている。せめて同じ一個の「人間」として裁いてもらいたいという願望は、戦争という「不合理」に身を投じた人間の実存的叫びと言うべきものだろう。

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