仕方がない
「仕方(が)ない」は、仕様がない、止むを得ない、どうしようもない、なすすべがない、といった意味であり、古くは「是非もなし」「是非に及ばず」とも言った◆織田信長が本能寺で反乱軍に取り囲まれ、首謀者が家臣の明智光秀だと知らされて漏らした言葉が「是非に及ばず」だったという◆昭和天皇は1975(昭和50)年10月31日に訪米から帰国した時の記者会見で、広島への原爆投下について問われ、「遺憾には思ってますが、こういう戦争中であることですから、どうも、広島市民に対しては気の毒であるが、止むを得ないことと私は思ってます」と答えている。外国人からは、日本人の自己犠牲的な悲観性を表す表現と指摘されている◆太平洋戦争時、強制収容所の中で、日系人は絶望感と虚無感を克服しようと「仕方がない」とつぶやき、苦しい状況の中で挫けることなく希望を見いだそうとしたといわれる。考えてみると、何かにつけて、この言葉を口にしている自分がいる◆我が身に問題が降りかかった時や、思い通りに事が運ばなかった場合に「仕方がない」「しょうがない」と口にするのは、逃れようのない現実を受け入れるという以上に、目の前の問題と正面から向き合わず、あいまいにして身をかわす、あるいは厳しい現実を直視しないで、何もなかったかのごとく先へ進もうとする本性なのかもしれない。(形山俊彦)






