司馬遼太郎記念館の館長 上村洋行氏(82)
作家の司馬遼太郎氏(1923~96)が亡くなって今年で30年がたった。大阪府東大阪市の司馬遼太郎記念館も2001年11月1日に開館してから25年の節目を迎える。同館の上村洋行館長(82)は司馬氏が作品に込めた公への意識や思いやりの大切さを現代の人々にも考えてほしいと呼び掛ける。
岩本浩太郎
2月12日は司馬さんの命日ですね。
上村 今年は没後30年であると同時に、記念館が開館して25年目となる年でもあります。特別な催しを行う予定は特にないのですが、5月10日まで催している企画展のテーマ「この時代に思い出したい『坂の上の雲』のメッセージ」に没後30年の思いを込めました。
どんな思いを込めたのでしょうか。
上村 小説『坂の上の雲』には「公」と「私」の精神を健康な形で併せ持った明治人がたくさん登場します。自分だけのことを考えずに、国のことや周りの人たちのことを考えて行動する人物ですね。
人間はどうしても「私」中心になりがちですが、社会生活を送る上で周囲への思いやりや公への意識を持つのが大切だと思うのです。最近はそうした他者や公への意識を忘れてしまう人が多いように感じます。明治の時代を理想化するわけではありませんが、現代の私たちも改めて考えてみてはどうかという思いがあります。
記念館は都会にあるのにとても落ち着く場所ですね。
上村 「感じる記念館」として、来館者に展示物を見てもらうことよりも感じてもらうことに重点を置いています。
設計は建築家の安藤忠雄さんで、3層の吹き抜け空間に巨大な書棚を設け、そこに2万点に及ぶ様々な書物を展示しています。隣接する司馬の自宅にある約6万点の蔵書をイメージした空間です。ここで、来館者に何かを感じ取ってもらえればと思っています。
庭も印象的です。
上村 正面から入ると司馬が好んだ雑木林のような庭があります。元々あった雑木林風の庭と同じ種類の樹木や草花を記念館の周りにも植えました。25年たって、司馬の自宅の樹木と重なり、小さな森のようになりました。ふと司馬の書斎前に立っている時にこの樹木たちが司馬の精神を守ってくれている感じがします。
館長さんご自身は司馬さんをどのような人物としてご記憶されていますか。
上村 私が司馬を知ったのは、私の姉(みどり氏)と結婚する頃で、小学6年くらいの時でした。まだ司馬の本名、福田定一の時代ですが、その時は周りの大人…
つづきは2026年3月11日号をご覧ください








