ノグチの光の彫刻ともす 芸術愛する人の縁結ぶ
香川県さぬき市 真言宗御室派普門院金剛寺 岡田弘道住職
香川県さぬき市の真言宗御室派普門院金剛寺には世界的彫刻家イサム・ノグチが考案した光の彫刻「AKARI」がともる。岡田弘道住職の父親で、先代の岡田泰弘・前住職がノグチと親交を深め、たびたび同寺に滞在し食事を共にして語り合った。20年に及ぶ交流の後、ノグチは晩年、死後の供養を先代に頼んだ。戒名は「梵性院光阿イサム大空尚」。本堂に位牌を祀り現在も弔いを続ける。
日系アメリカ人として漂泊の人生を送ったノグチは「彫刻の機能とは、単なる建築の装飾とか美術館の財宝であることを超えるものだ」と考えていた。岡田住職も自坊の室内装飾でノグチの思想を体現する。ケースの中に陳列するのではなく、本堂や応接室で実際に使用することで、作品を生かしている。
同寺所蔵のAKARIシリーズは初期の作品。ちょうちんの技法を基に美濃和紙と竹で制作され、床に置くものや天井からつるすものなど大小様々の形がある。ノグチはエッセーで「『あかり』は日本語で『光』を意味し、その表意文字は太陽と月の組み合わせであることなどから命名した」と記す。
本堂外陣の天井から直径約1・2㍍の球体がつるされ、両脇にも大型の作品が置かれる。現代的でありながら、智慧の光を尊ぶ真言寺院の荘厳として調和している。
同寺はノグチがアトリエを構えた高松市牟礼町の隣町にあり、四国八十八ヶ所霊場第86番札所の志度寺に隣接する。良質な花こう岩・庵治石が産出することから、ノグチは日本のアトリエを香川に置き、ニューヨークと行き来し作品を制作。ユネスコ本部の庭園など大規模な公共彫刻や建築を手掛けた。
同寺は通常非公開。国際的に活躍したノグチの作品が金剛寺に蔵されていることは広くは知られていない。多くの文化人が出入りし、香川県で活躍した建築家・山本忠司が設計や内装を手掛けた応接室がある。
岡田住職は地元公立小学校で31年間教員として勤務。現在は自坊の伽藍護持のほかに宗会議員、副議長も務める。「『百聞は一見に如かず』。自分の目で見て直接に感じることが大切。アートやデザインが好きな人々、作り手や研究者の縁をつないでいきたい」と話す。
(磯部五月)




