国家情報会議設置法 その後にくる問題とは(6月5日付)
国家情報会議設置法案がこのほど可決成立した。この法案は、高市早苗首相の肝いりで進められてきたもので、「我が国のインテリジェンス機能を強化する第一歩」だと首相自ら語る。インテリジェンスとは国家の安全保障に関わる情報収集や分析を指し、警察庁や外務省など複数の省庁を超えて情報の集約や分析に携わる部局が国家情報局である。その司令塔となる国家情報会議の議長は首相が務めることになる。
この法律の先には、スパイ防止法制の策定、そして対外情報庁の創設が控えている。どちらも外国勢力の情報活動を念頭に置いたものだ。これも高市政権が強力に進めているものだが、ここで大きな問題が浮上してくる。つまり、国家による情報収集の強化が、国民に対する監視強化につながるのではないかという懸念だ。
今回の審議では付帯決議として、政治的中立性の確保や国民のプライバシー保護の配慮が盛り込まれた。だが、これには法的拘束力はない。本来なら、第三者機関の設置や国会報告の義務など、歯止めとなる具体的な仕組みをも決めておかなければならなかったはずだ。この仕組みがないと、時の政権に恣意的に運用され、国家の情報活動が国民に対する「諜報」活動に容易に転化してしまう恐れすらある。宗教教団とてその例外ではない。
これには国内での過去の事例や海外における現代の事例が参考になる。戦前の治安維持法は国体を変革する社会主義運動やその結社を取り締まるのが主目的であった。しかし度重なる改定や拡大適用により、取り締まりの対象は拡大し、矛先は宗教団体にも向けられることなった。結果、数多くの教団に対する干渉や弾圧が相次いだ。また中国には反スパイ法(反間諜法)があり「国家安全」に抵触する言動は容赦なく拘束や刑罰の対象とされる。ここにも宗教に対する取り締まりがあり、非公認の宗教団体の活動や、公認宗教であっても非公認の場所での宗教活動は容認されない。
これらの事例で共通するのは、時の政権により反政府的な言動がそのまま反国家的であると読み替えられ、明確な基準もないままに情勢次第で任意に運用されるということだ。今後、高市政権はスパイ防止関連法制の速やかな策定に取り組むというが、歯止めとしての具体的な仕組みを、これからでも国会を通じてしっかりと作っておかなければならない。全体主義国家では国家が国民を監視するが、民主主義国家では国民が国家を監視するのが基本原則だからだ。









