日本の古代寺院と造営氏族…小笠原好彦著
飛鳥から奈良時代にかけて、畿内の有力氏族が大和とその周辺に続々と氏寺を創建したとされる。本書はそうした古代寺院をテーマに、廃寺跡の発掘調査の成果と史料などを照らし合わせ、寺院名の比定や造営の時期、そこから導かれる造営氏族の活動や性格などを丁寧に解明しようとしている。
例えば、巨勢氏の氏寺として知られる巨勢寺跡(奈良県御所市)について、出土した軒瓦の時期区分とそれぞれの時期の巨勢氏の政界での活動を検討。飛鳥期の創建、天智朝の主要堂塔と講堂の構築、壬申の乱による影響、持統朝の回廊や築地の整備といった伽藍の造営過程が、史料に現れる有力氏族としての活動と対応関係にあることを提示する。
大和・摂津・伊賀・近江の古代寺院が主たる考察の対象。さらには東国における古墳築造から寺院造営への推移を、律令制導入に伴う評(郡)司の任用の際、在地氏族による氏寺の所有がその判断材料の一つとしてあった可能性を論じる。また発掘成果だけでは判別し難い僧寺と尼寺の区別に関して、ごく近距離に造営され、かつ創建期に複数の同じ文様の軒瓦が葺かれていた二つの寺院を、僧寺と尼寺という有機的な関連をもって有力氏族が造営したと推定するものなど、同時代の地域史的な展開にも目が配られている。
定価1万2100円、吉川弘文館(電話03・3813・9151)刊。




