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中外日報社「宗教文化講座」

限界地域からの希望 時代の変遷に人生翻弄

北海道大大学院教授 櫻井義秀氏

時事評論2026年5月29日 09時16分

5月1日に、北海道の新十津川町(人口約6千人)にある真宗大谷派の光臺寺で「宗教二世問題」と題して、会場10名、オンライン10名ほどの大谷派僧侶の方に山上裁判のことや旧統一教会二世信者の苦悩について話をした。

布教や教化の方法、信仰継承のあり方を我が宗のこととして考え、不幸な宗教との出会いをしてしまった方を支援できるかどうか、現代仏教や個々の僧侶に問われている。

翌日の午前、旧産炭地で超過疎の自治体を調査している教え子(博士課程に在籍する総務省職員)と一緒に、20㌔ほど離れた北空知にある歌志内市を訪れた。

最盛期には人口がおよそ2万人あったこの市は、昭和47年までに全炭鉱が閉山して人口減が続き、現在約2500人である。人口規模だけで言えば、10分の1にまで縮小し、明治30年代頃の開拓時代に戻っている。

とはいえ、細長い谷沿いに点在する市街地には、まだ1日に7本のバスが走っている。高齢化率55%の同市は日本一小さい市だが、市内に義務教育学校、病院、消防署、介護施設、スーパーを揃え、子育て支援政策で隣接の砂川市から若夫婦を呼び込もうとしている。

社協会長兼町内会長に地域の実情を伺った。この方は77歳になるが、祭りの存続に携わり、地域の要望を行政に伝え、社協の仕事も手伝いながら、自家用車で高齢者を市外の総合病院まで連れて行くこともあるという。

最近、気がかりなことを尋ねると、地域の存続可能性以上に政権の右傾化だという。憲法改正の動きや軍需物資の輸出解禁によって戦前の道を歩むのではないかと。どうして日本人はこう忘れっぽいのかと。

北海道の中央部、空知には標高数百㍍の丘陵地帯に多くの炭鉱がある。明治から昭和30年代まで石炭産業が栄え、三井・三菱、北炭といった大企業や小規模鉱に本州や朝鮮半島から人々が集まった。多数の鉱員が事故で命を落とし、閉山と共に散っていった。

地域に残る高齢者の親や祖父は本州から渡ってきたり、満州・朝鮮半島・樺太から引き揚げてきたり、まさに国策に人生を翻弄されてきた。国が人の命をどう扱うのか、知っているからこそ、戦争はこりごりだという。

午後には岩見沢市の北炭鉱があった万字集落の浄土宗萬念寺を訪ね、住職に地域の話を伺った。

万字も最盛期に約5千人が暮らし、炭鉱(ヤマ)の炭住と市街地(商店や歓楽街)まで、万字線がひかれて石炭を積み出していた。昭和51年に閉山し、現在は約50人が暮らす。人口は約100分の1に縮小した。

5カ寺あった寺は3カ寺が廃寺となり、萬念寺の檀家も万字には3軒しか残らなかった。しかし、他所に出た檀家との縁を先代からつなぎ止め、十夜会を含む年に5回の法要と月参りを欠かさない。住職は年間7万㌔を運転しているという。

炭住跡に植えられた数百本の桜が満開だった。苗木はニトリが寄贈し、地域の人々が50年余守ってきた。地域を愛する人々は、けして多くを語らない。

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