宗教的戒律と医療 国際的視野からの考慮(5月13日付)
日本では宗教的方法で病気治癒を願うのは信教の自由とされている。だが宗教的戒律に基づく医療行為拒否に対しては、一般に肯定的には受け止められてはいない。
今年1月にエホバの証人の信者が、大津市の滋賀医科大付属病院に対し損害賠償訴訟を起こした。滋賀県内に住むエホバの証人の信者である女性が、2024年に同病院で白内障の手術を受けようとしたが、輸血拒否する宗教の信者であることを理由に断られた。
このことは基本的人権の侵害であるとして、信者の女性による今回の訴訟になったのである。なお、この女性は別の病院で手術を受けたが、輸血は必要なかった。
エホバの証人は、日本では1953年に「ものみの塔聖書冊子協会」として宗教法人の認証を受けているが、信者は輸血拒否を戒律として固く守っている。ほかにも兵役拒否や格闘技拒否、また国旗敬礼をしないなどの戒律があり、これらに従っている。
エホバの証人の輸血拒否の背景や現状については「ユーチューブ」の「RIRCチャンネル」が4月制作の動画で解説している。タイトルは「エホバの証人が『自己血輸血』を解禁~エホバの証人の戒律と日本社会~」である。
自己血輸血には「希釈法」「回収法」「貯血法」の3種類あり、今回解禁されたのは「貯血法」であること、またそのことの意味が解説されている。なお他人からの輸血は依然禁止である。
この中での重要な指摘は、日本のエホバの証人が、他の国に比べて米国の本部の方針に極めて忠実であることである。この点はエホバの証人の輸血問題を論じる際に押さえておくべきである。
輸血は時に生命に関わることもある医療行為であるので、それが拒否された場合にどう対処するかは、米国でも日本でも、医療関係者が頭を悩ませてきた。現代はさらに医療に対する不信感の強まりといった問題もあって、話はより込み入ってきている。
新型コロナウイルス感染症のワクチンに対しては、陰謀論が米国で起こり、日本にも広がった。この場合はコロナワクチンの効果に対する不信感が関わっていたが、一部には宗教的な理由が絡むワクチン反対もあった。
宗教的信念に基づき現代の医療を受け入れないのは信教の自由とは言える。しかし、今回のように宗教的戒律を守る信者への医療を拒否することが、人権侵害と言えるのか。グローバルに活動する宗教が増えている現代、宗教的戒律と医療に関わる問題には国際的な視野も必要になってきている。






