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「国論二分」の時代 象徴天皇制が示す重み(5月8日付)

2026年5月13日 09時51分

2016年7月、安倍晋三政権下の参院選で「改憲勢力」が3分の2以上を占め、衆参両院で憲法改正発議に必要な条件が整い改憲派が勢いづいた。その3日後、明仁天皇陛下(現上皇さま)の「生前退位の意向」がNHKで報じられ、翌8月8日、天皇陛下の「お気持ち」がビデオメッセージで公表された。メッセージの「日本国憲法下で象徴と位置づけられた天皇の望ましい在り方を、日々模索しつつ過ごして来ました」などのお言葉は、天皇陛下が改憲への動きに対し身を賭してけん制したのではと論じたメディアもあった。

その当否はともかく、誕生日に際してのお言葉や日本各地への訪問・慰霊の旅などの公的行為も併せると、天皇陛下は「祈り」と同時に、平和憲法の下で地域の人々と苦楽を共にし、心を通い合わせることによって国民の共感と一体性を培う。それが「国民統合の象徴」として重要な役割と信じておられたことは間違いなかろう。上皇さまになっても、そのお気持ちに変わりはあるまい。

メッセージは今も心に響くが、それに比して昨今の軍事に偏り、社会的な分断をいとわない政治状況は寒心に堪えない。とりわけ高市早苗首相が言う「国論を二分する政策」には、深い懸念が募る。

平和主義に基づく武器輸出規制をあっさり投げ捨て、殺傷能力のある兵器輸出を全面解除し、また国民監視の恐れが指摘される「国家情報会議」「国家情報局」の設立は第一段階に過ぎない。今後、スパイ防止法や国旗損壊罪など、より国権主義的な色彩が強い法案提出が予定されている。極め付けは国論二分が必至の憲法と皇室典範の改正だ。改憲は平和主義の後退が、皇室典範は皇族数の確保などで復古的な改変の可能性が心配される。改憲には既に大規模な反対デモが行われている。国の新年度予算審議のように、政府が議論を尽くさず「多数の力」で押し切ろうとするなら、社会的に取り返しのつかない亀裂が生じかねない。

話を戻し、上皇さまは皇太子時代から、統合の環から除かれがちな施設や被災地を訪問、特に沖縄は11回も足を運ばれた。そのように現場に臨む激務が高齢で難しくなったことが退位の一因とされたが、退位を巡る政府有識者会議では「天皇は祈っていればいい」と無神経な発言があったようだ。

現徳仁天皇陛下は上皇さまのお気持ちを継ぎ「国民統合の象徴」のつとめを果たすと誓われた。重大な転機を迎えた感のある時代だからこそ、国民が敬愛する象徴天皇像に変わりがないことを願う。

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