マグロ船の哲学
マグロ漁船で働く漁師たちのストレスとの付き合い方に学び、人材育成コンサルタントとして企業の業績向上に貢献している人がいる。齊藤正明氏が乗ったマグロ船は漁業関係者から「日本一」と呼ばれる船だった◆マグロ船は出港したら40~50日は陸に戻れない。コンビニもなければ病院もない。携帯電話も使えない。船は全長わずか20㍍。寝床は長さ180㌢、幅60㌢、天井までの高さ80㌢の狭い環境で9人の男たちが共同生活をする◆朝6時台から5時間かけて縄を海に投入し、巻き取る作業を午後3時から翌朝3時まで続ける。1日17時間の肉体労働。なのに航海中、一度もけんかやもめ事が起きなかった。「人間関係はガラスでできたコップと一緒。いったん割れたら元には戻らねぇ。小せぇことでもめる本人たちは、世界が2人だけでできていると思うちょる」◆船長もベテランも新人も和気あいあいと楽しい秘訣の一つが叱り方。「褒める言葉+注意する言葉+褒める言葉」と注意したい内容をサンドイッチにする。やることをやったら結果は海に委ねる。失敗は目標達成に必要なもの。仕事に楽しさと誇りがあればよい◆「祝いごとがあれば皆マグロの刺身を食うじゃねーか。それは俺らがマグロを捕ってるからできる。そう思えば、マグロ船の仕事は世の中の役に立っちょる」――敬服すべき実践哲学ではないか。(形山俊彦)







