牛と人の風土記
島根県邑南町の住民団体がこのほどドキュメンタリー映画「中国山地 牛と人風土記」を製作した。かつて農耕や荷役で重要な役割を果たした牛にまつわる中国地方の歴史や文化の映像記録をまとめたもので、ドキュメンタリー映画監督の青原さとし・浄土真宗本願寺派教信坊(広島県北広島町)住職が撮影した◆舞台は昭和30年代まで牛馬市が定期的に開かれていた邑南町や、飾り付けを施した「飾り牛」が代かきを行う花田植の祭事が継承されている広島県芸北地方を中心に中国5県各地に及ぶ。往時を知る古老や畜産業関係者ら登場人物の話からは牛と人間の密接な関係が生活そのものだったことが伝わってくる◆家畜の供養や牛馬信仰を巡る宗教文化にも注目。広島県安芸高田市在住の男性(75)が「生まれ変わったら人間になってこいと。牛から人間が生まれると昔は言いよったけぇのぅ。うそか本当か知らんが、わしはそう聞いて大きくなった。それほど人と関わりがあったということじゃと思う」とある種の輪廻観を語る姿が強く印象に残る◆現実に中国山地で暮らす登場人物たちが示すそうした宗教性は、組織や制度に基礎づけられた既存の「教団」としての宗教の枠組みでは説明できない◆そのことがまた「生きるとは何か」という問いをさらに促しているように思われる。映画は4日から広島市西区の横川シネマで公開される。(池田圭)






