近代日本の教育と仏教 -人間形成論と国家主義の相剋-…眞壁宏幹・田中潤一・渡辺哲男編
国家神道を背景とする明治から昭和の国家主義的臣民教育と、仏教などの宗教教育は対立し、公立学校での宗教教育は禁じられてきた。しかし、その中でも近代仏教は教師の実践や青年の修養、人間形成に影響を与えた。僧籍にない教育者たちに着目し、教育勅語体制下で近代仏教がたどった思想史について、教育学を中心に仏教史学、真宗学などの専門家たちが最新の知見で解き明かす。
第1部は福島政雄、東井義雄ら教育者を取り上げ、浄土真宗の影響を考察する。福島は大乗仏教を基に「生命教育学」と呼べる教育を生み出したが、それは国家主義との相剋の中で変容していく。
第2部は都市と農村をテーマに、仏教精神による人格育成を掲げる高楠順次郎が移入した人間ブッダ像の受容や、高学歴エリートの青年が参加した日蓮サークルの影響力、宮沢賢治の農民芸術論に秘められた日蓮宗的価値観などを論じる。
第3部では近代仏教と国家観について明らかにする。水戸学や篤胤学から、皇道を基調とする「国体」は仏教を排除していた。近代ナショナリズムを受けて、田中智学は国体と仏教を包摂・一体化した。大谷派の暁烏敏は太平洋戦争を聖戦に位置付けたことで批判を受けるが、論者が疑義を呈す。
定価6600円、法藏館(電話075・343・5656)刊。



