豚汁の魅力
豚汁には人を引きつける不思議な魅力がある。豚肉と根菜を中心とした具材をみそで味付けした定番の汁物であり、調理法は至ってシンプルだ。しかしそれだけになかなか一筋縄ではいかないところがある◆レシピを変えながら試作した豚汁を休日の食卓に並べるのが我が家の寒い時期の風物詩。個人的にはサトイモが入ると芋煮のように思えてしまうので避けることが多いが、具材の選択や下ごしらえ、みそを投入するタイミング、隠し味の有無などでまるで違った表情を見せてくれる◆とはいえ何より肝要なのは、素材の持ち味を引き出しつつ、鍋全体のまとまりを重視すること。ゴボウなどのアクの強い食材であっても調理次第で独特の風味を存分に生かすことができる。そう考えると豚汁は、社会の縮図のようにも思えてくる◆現代社会は多様な価値観を持った人間の集合で成り立っている。そこに排除や対立、分断の論理を最初から持ち込んでしまえば必ず行き詰まる。学校や職場、家庭といった長く時間を共にするコミュニティーにおいては、互いに調和や和合、共生を志向しなくては立ち行かない◆豚汁は具だくさんでありながら、温かくも懐かしい味がする。最後の隠し味に大鍋に落とした一見異質なバターの一片が、思いがけない一体感をもたらすこともある。そうした社会が実現することを願ってやまない。(佐藤慎太郎)






