PR
購読試読
中外日報社ロゴ 中外日報社ロゴ
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
中外日報社「宗教文化講座」

民主主義は曲がり角か ネットが阻む考える力(3月6日付)

2026年3月11日 09時38分

「今の日本は知的なものの権威が大きく下がり、すぐわかる話でないと受け入れられない」と、元大蔵省(現財務省)財務官の榊原英資氏が、著書『幼児化する日本社会』で嘆いている。1990年代に為替市場で活躍し「ミスター円」といわれた人だ。氏はまたテレビのキャスターやコメンテーターらが複雑な問題を単純に「イエスかノーか」で割り切る言説は物事を深く考えずに結論だけを求める二分割思考を招き「思考の退化で、精神の幼児化」だと憂える。

賛否はあるだろうが、うなずける点が多い。ただ、同書の出版は約20年前だ。インターネットが普及した現在、思考の退化は一層深まったように思う。

節目の一つは「ポスト・真実」という言葉が流行した2016年だった。英国が国民投票でEUを離脱、米国ではトランプ大統領の1期目当選の年。共にネット上で偽情報も含め対抗勢力を攻撃する大量の投稿があり、結果に影響したという。トランプ氏は自分への批判報道は全て「フェイク」と切り捨て、2期目に入って横暴はよりひどい。事実はどうでもよく、人の感情に訴え、人気獲得が第一のポピュリズムがこの10年で一段と進み、日本にも影響が及んでいる。そんな時代の潮流が交流サイト(SNS)でますます強まっている。

ネット情報は分かりやすさが最優先で文章も短い。アルゴリズムに導かれ知りたい情報ばかりの世界に入り込み、異なる意見に関心が向かない。だからネット上の言論も榊原氏の懸念を上書きするように単純化され、思考停止に陥りやすい。1冊の本を10分で読めるよう縮めた要約版が売れるような時代の世相が、特に若い世代の考える力を衰弱させてはいないか。

高市早苗首相の人気投票化した2月の衆院選結果も、それと無関係ではなかろう。ネットの動画投稿サイトは、首相に好意的な切り抜き動画が目立った。閉塞感が漂う時代への不満や将来に不安を抱く若い世代などに、首相に都合よく切り取った短い動画が好印象を与えたという。政策の是非は、もう思考の外のようである。

ただ、自民党の獲得議席約68%は、1942年総選挙で翼賛政治体制協議会(大政翼賛会)の推薦候補が占めた約82%に次ぐという事態には注意が必要だ。高市政権びいきの浮薄な動画投稿は選挙後も続いているが、仏教はもとより、どの世界も深い思索がなければ真理には到達できない。その道理をわきまえていないと、深い議論によって最適解を追求する民主主義もいずれ壊れてしまう。

地域防災に懸念 消防団員の減少(6月3日付)6月5日

雨期が近い。梅雨前線により死者271人に上った2018年の西日本豪雨は記憶に新しいが、大雨や台風禍はもとより、近未来に巨大地震も想定される。天災は日本の宿命とはいえ「減災…

原発事故被害地の今 覆い隠される被ばくの危険(5月29日付)6月3日

「先祖代々の墓参りに行くのさえ当局の許可が必要なのですよ」。福島県の住職が、被害者である檀家の苦難を代弁した。東京電力福島第1原発事故で故郷や居住地がなお避難指示区域の人…

水俣病の現場から 苦難に宗教が果たす役割(5月27日付)5月29日

公害問題の「原点」と言われた水俣病が地元医師によって公式確認されてからこの5月で70年だ。現地の熊本県水俣市で患者たちを支え続ける相思社の「歴史考証館」を訪れると、今もな…

大蔵経を通じた国際的なプラットフォームの可能性などを論じる登壇者ら

三大蔵 「世界の記憶」登録記念 増上寺で国際シンポ

ニュース6月9日
27日の全体報告会=本願寺派鹿児島別院提供

拘禁刑踏まえ研鑽 受刑者に応じた指導 「いのち」の大切さと対話宣言 全国教誨師大会

ニュース6月9日
シンポジウム「近代真宗史研究の現在」の全体討論(龍谷大大宮キャンパス)

近代真宗史研究の現在問う 近藤俊太郎氏ら龍大でシンポ 「清沢」に未開拓分野

ニュース6月9日
「墨跡付き仏像カレンダー」の製造販売は2025年版をもって終了いたしました。
長らくご愛顧を賜りありがとうございました。(2025.10.1)
中外日報社Twitter 中外日報社Facebook
このエントリーをはてなブックマークに追加