文化財盗難の多発 防犯対策、意識啓発を(4月22日付)
寺院や神社での盗難事件は後を絶たない。壱岐の高麗初雕本大般若経盗難や対馬の寺社から仏像、経典が盗まれた事件は日本と韓国の外交的問題にも発展して大きく報道された。京都の建仁寺や東寺で盗難に遭った仏像が戻ってきたような例もあるが、大半は泣き寝入りになる。
仏像は帰依者に拝まれるためにある。その信仰を妨げる盗人に対しては、まったく罰当たりというしかない。
防犯対策の一つとして、最近、3Dプリンター技術を使った精巧な複製の仏像が作られている。奈良大の大河内智之教授が県立和歌山工業高の生徒や和歌山大の学生と共働して制作したレプリカはメディアでも注目された。秘仏本尊のお前立ち像のような感覚で拝することができるのかもしれない。
古い寺社などが多く、文化財の防犯管理が重要な課題になる奈良県警は生活安全企画課に全国で唯一の「文化財保安官」を設け、大学生を「一日文化財保安官」に任命して啓発活動を行うなど、ユニークな取り組みも行っている。これには大河内教授も依頼を受けて協力しているという。
「文化財保安だより2025」として発行された「文化財防犯チェックシート」も参考になる。
そこでは、①犯罪や不道徳行為をやりにくくする(聖なる)空間作りをしている②定期的な巡回を実施している③出入り口や窓の施錠を強化している④陳列してある文化財に外部から容易に近づくことができない⑤防犯設備を設置している⑥積極的な「(拝観者などへの)挨拶・声かけ」を行っている⑦文化財の特徴、状態を記録化している⑧異常が発生した際の通報体制を確立している⑨地域住民との交流を持っている――というチェック項目を挙げている。
寺社の文化財盗難の増加は、地域社会の過疎化とともに、寺院などの後継者難が深刻化し、寺で言えば無住、兼務地が多くなったこととも関係している。
定期的な巡回や防犯設備の完備といったことはなかなか難しいだろうが、所蔵する文化財のリスト作成や緊急時の通報体制確立は心掛けておくべきだろう。そして何より、檀家や信者であるか否かを問わず、地域の住民との日常的な交流は住職などが常駐できない場合も、心掛けておくべきである。
また、過疎地の無住・兼務寺院を包括する宗派の側も、本尊、寺宝、文化財などを伽藍と共に守り、次代に継承してゆくために、様々な連携の可能性も含め、組織的な対応を考えた方が良いのではないか。







