PR
購読試読
中外日報社ロゴ 中外日報社ロゴ
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
中外日報社「宗教文化講座」

意図的風化 原発事故・震災被害巡って(4月17日付)

2026年4月22日 09時17分

「『忘れない』って、それは済んだ事柄に言う言葉。震災も原発事故も終わっていないんですよ!」。この春、東日本大震災被災地の随所で被災者のこの叫びを聞いた。「311」が過ぎ、メディアの報道が極端に減る中では特に重い意味がある。そのような風化にあらがう宗教者も各地にいる。

岩手でも宮城でも「15年は決して節目などではない」と語り継ぎや教訓の伝承活動をする僧侶らが多い。原発事故でまだ帰還困難区域が広がる福島ではなおさら。津波による直接死より圧倒的に多い避難などによる関連死が増え続ける一方で、住民帰還は進まない。

政府の原子力緊急事態宣言が発令中にもかかわらず国などの「復興」の掛け声で、まるで事故が収束したかのような雰囲気が醸し出されている。一方で強制的に故郷を追われた被害者や、幼い子供の被ばくから逃れるため遠方への避難を余儀なくされ、戻れない人々が不安を訴えると「危険をあおる風評加害者だ」とまで言われる。現にあちこちに高線量の土地があるのに、理不尽な非難だろう。

現地に赴いて事故被害者の支援を継続する石巻栄光教会の川上直哉牧師は「問題を隠蔽する事故被害の意図的な“風化”こそ真の意味での風評加害」と指摘する。犠牲者や被害者が何万人と数字ばかりで表現され、一人一人、個々の家族の苦難や悲しみの物語が消される中で、説得力ある言葉だ。

例えば、国が莫大な予算を投じて推し進める「福島イノベーション・コースト構想」によって原発近隣の沿岸部に続々建設された巨大施設の敷地の下には「事故で救出、捜索活動が阻まれた津波犠牲者の遺体が眠っている可能性も大きいのです」と。国や原発再稼働を急ぐ東電の動きに「事故がなかったことにされてはたまらない」と反論した行政関係者の悲痛な声が耳に残るという。

川上牧師は「原発事故をただ批判するだけでなく、それを生んだこの社会の一員として、自分事として対応する」との考えから、意図的な風化に抵抗する。海外も含めて事故の実相を発信する。

地元の写真家が「今、起こっていること」として小中高生を対象に被災地の現況を解説する講義の内容を冊子で広め、明治以降中央から抑圧され続け原発立地の前史ともなった東北の歴史を掘り起こすスタディーツアーも行っている。

「それに現在の痛みをつなぐことで、幅広い連帯を求め、小さくされた沈黙の声を上げる。小さくされた者と共にあるのが聖書の神であると信じる者として」との姿勢にキリスト者の矜持が見える。

トランプのアメリカ 変化する政教関係への危惧(5月1日付)5月8日

アメリカのワシントンD.C.で4月25日までの1週間、アメリカ聖書朗読会(The America Reads the Bible event)が行われた。アメリカ建国25…

殺傷武器輸出解禁 その危うさに意見発信を(4月29日付)5月1日

政府は先頃、5類型(救難・輸送・警戒・監視・掃海)に限っていた武器輸出原則を撤廃し、殺傷能力がある武器の輸出を全面的に解禁した。これは、多くの国民にとって寝耳に水の驚きで…

宗教関与の「暗と明」 ハンセン病なお続く差別(4月24日付)4月28日

ハンセン病患者、元患者を強制的に収容して差別を拡大した「らい予防法」が廃止されて4月で30年。法の下に断種や堕胎を強要するなど過酷な人権蹂躙がついこの間まで行われていただ…

開白法要は上村長老の導師により舎利殿で営まれ、俊芿律師絵像の前には皇室ゆかりの供物が供された(1日午前10時)

俊芿律師800年遠忌 開山の遺徳を偲ぶ 秋篠宮ご夫妻列席 泉涌寺で大法会

ニュース5月8日

テキサス州「十戒法」合憲 米・第5巡回控訴裁判所 レモン・テスト無効 国教樹立当たらぬ

ニュース5月8日
日本語の原文と中国訳の文章・ローマ字文が併記されている中国語版勤行集

本願寺派中国語版勤行集 現地門信徒から好評 「安心・連帯感生まれる」 英語版に続き2例目

ニュース5月7日
「墨跡付き仏像カレンダー」の製造販売は2025年版をもって終了いたしました。
長らくご愛顧を賜りありがとうございました。(2025.10.1)
中外日報社Twitter 中外日報社Facebook
このエントリーをはてなブックマークに追加