信仰と生活文化こそ糧 パレスチナの訴え(12月17日付)
イスラエルによる侵攻で犠牲者が増え続けるガザの人々の日常の生活ぶりを知ってもらおうと、講演会「パレスチナ文化の日」が大阪のモスクで開かれた。数々のドキュメンタリー映画でも描かれているように、「停戦」後も続く圧倒的軍事力による「民族浄化」とも言える攻撃に対して、彼の地の人々の信仰に基づく文化こそが生きる支え、根強い抵抗の糧であることが実感される。
祖父ら親戚が戦乱のパレスチナから逃れ、自身は現在オーストラリアで心理学を研究するアミナ・カーンさんが、がれきの山となり多数の子供らが爆撃や飢餓で亡くなるガザの現況、その中でもイスラエルに破壊されたムスリムの聖地アル・アクサー・モスクを心の拠り所として住民が懸命に日々を生きる様子を話した。
その象徴として伝統的な幾何学模様の刺繍「タトリーズ」が、ワークショップも交えて紹介された。何百年も前から母から娘へと伝え続けられた生活に根差した手芸で、ベツレヘムなら月、他には花とか糸杉とか、地方によってそれぞれ特有の模様パターンがある。
手作りしたヒジャブなどの服の刺繍を見るとその女性の出身地が分かる。大戦後のイスラエル建国以来、住む地を追われた多くの家族が難民となって各地に散ったが、女性たちは自分の刺繍によって奪われた故郷のアイデンティティーを守り続けた。それが軍事力によっても奪えない誇りなのだ。
映画で紹介されるパレスチナ人の生きざまも同様だ。イスラエル兵が住民を銃殺して二度と住めぬよう家を徹底的に破壊し、クルアーンに脱糞するのは、人々の暮らしと文化に向けた憎悪が下劣な非人間的行為として表れたものだ。
これに対して、孤児となった少女の「イスラエルが嫌がることをするの。祈ること、我慢強いこと、深い信仰で抵抗すること」という血の叫びの訴えが胸に突き刺さる。肥沃な農地をイスラエルに強奪されて荒れ地に暮らす老女たちは、失った故郷への讃歌、昔ながらの恋の歌を口ずさみ、「ここで生き、ここで死ぬ」と声を上げる。
日本文化の研究者でもあるアミナさんは、タトリーズが日々の暮らしから時間をかけて実用的に生まれた点で日本の刺し子と似ていると言う。日本文化に興味を持ったきっかけの一つが海外でも人気の漫画『ONE PIECE』。登場人物たちが様々な困難や試練にくじけず、手を携えて立ち向かう姿がガザの住民にも大きな励みだと言い、「今、大好きな日本の皆さんが少しでも心を向けてくださることが力になります」と訴える。






