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宗教的虐待への対応 正体隠した勧誘から悲劇へ

北海道大教授 櫻井義秀氏

時事評論2025年12月25日 10時05分

11月15日と16日の両日、札幌市で「第31回日本子ども虐待防止学会」が開催され、3千人余りの参加があった。私は、弁護士や児童相談所の方々と「保護者の信仰に関連する虐待への対応を考える」というセッションをもった。約50人の会議室に立ち見の会員が30人近く入る大盛況だった。

私が「宗教二世問題と児童虐待」の概略を説明し、掛川亜季弁護士が「宗教二世事案の対応」として「子どもの権利条約」「児童虐待防止法」などの関連法や厚労省の通知「宗教の信仰等に関係する児童虐待等への対応に関するQ&A」を解説した。次いで、横浜市児童相談所から事例が紹介された。

いわゆる宗教二世問題が、安倍晋三元首相殺害事件以降、統一教会のみならず他教団においても、親の信仰を子どもに強要する権利侵害の問題として浮上してきた。

より微細に見れば、親の献金により家庭が貧困化し、宗教活動に没頭するあまり、子どものネグレクトが発生し、子どもに身体的暴力を伴うしつけや、教団外の人々との交友や交際の禁止などがなされる事例が、二世信者からの告発によって明らかになってきている。

法律により禁止される行為が、未だに宗教行為として黙認され、関係省庁や行政機関が対応しきれていない状況がある。種々の法令や通知に即して具体的にどう対応できるのかというノウハウが、現場から求められている。

子どもが関係機関に直接連絡することはまれであり、中高生の場合に学校を通して相談があったり、中年期にさしかかった成人男女が法テラスや相談機関の門を叩いたりしている現状である。

安倍元首相を殺害した山上徹也被告の裁判が進行中だ。メディアは、事件の背景として1億円の献金を行った後、自己破産に追いこまれ、一人の息子を自死で亡くし、もう一人の息子と殺人犯として法廷で対面を余儀なくされた母親が、今でも信仰していることを伝えた。

中学生時に「どうして私を愛してくれないの」と問われた母が、バイト代の入った娘の銀行口座からお金を引き出していたこと、そして、就職後も鬼の形相でお金を無心してくる母親について、「統一教会が中に入っているからだ」と娘は証言した。山上被告自身は、家族を受取人にして保険金を掛けて自殺未遂を起こしている。

明らかに児童虐待を含む宗教的な虐待が30年前から発生し、子どもたちは特異な家庭環境での育ちを余儀なくされた。母親は姓名判断を訪問で行う正体を隠した布教を受け、夫の生命保険金約6千万円を夫の霊を慰め、先祖の恨みを解き、家族のためにまず使ったのである。

宗教被害が、宗教的虐待を生み出す。この事実を宗教者は知るべきである。そして宗教者として何ができるのか、立ち上がった弁護士(宗教等二世無料電話法律相談)や各地の児童相談所、福祉関係者と連携して、児童虐待問題に取り組んでほしい。

事件の教訓を学ぶというのは、実際にこうした問題の解決のために動くことでしかない。

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