トランプ氏の「平和」 狭量な国家利益追求に危惧(1月30日付)
トランプ米大統領が「ノーベル平和賞」の受賞を強く望んでいる。ベネズエラへの奇襲攻撃でマドゥロ大統領を拘束して独裁政権を倒したことを誇り、昨年ノーベル平和賞を受賞した同国の野党指導者マチャド氏から平和賞のメダルを贈呈されると、同氏を褒め上げた。
ノーベル賞委員会は「メダルや賞状が他人の手に渡ったとしても、受賞者は変わらない」という見解だが、ノーベル平和賞自体の価値はさらに落ちてしまった。我が国の高市早苗総理はトランプ氏をノーベル平和賞候補に推薦したというが、その見識は疑問である。
それはともあれ、気になるのはトランプ氏が唱える「平和」だ。その構想はトランプ氏の提唱する「ドンロー主義(Don-roe Doctrine)」からもうかがわれる。共和党の伝統的な「モンロー主義」のトランプ版で「アメリカ・ファースト」を基準にユネスコやWHOなどへの出資は国益に反する、として数々の国際機関を脱退。さらにトランプ氏は地球温暖化対策を「史上最大の詐欺」と決めつけて、パリ協定からも離脱した。
最近になって「米国の支配力を西半球に及ぼす」という考え方がしばしば語られている。この地政学的議論は、ロシアのプーチン政権によるウクライナ侵略でもさんざん聞かされた。「ルースキー・ミール(ロシア世界)」という思想がそれだ。ウクライナ側はモスクワ総主教庁系の正教会がこの思想で国民を洗脳していると反発している。
さらにもう一つの超大国・中国では習近平体制下で「中華民族の偉大な復興」が目標に掲げられている。これも領土問題と不可分だ。「宗教の中国化」で宗教界も「復興」翼賛体制に組み込まれた。こうしてみると、世界は帝国主義時代に戻ったように感じられる。
「平和」を重視するトランプ氏だが、それは「アメリカ・ファースト」の平和である。アメリカやロシア、中国の力のバランスで「平和」が一時的に成り立っても、弱者を犠牲にした安定で、永続的な「平和」にはならないだろう。現実には超大国がそれぞれの「夢」を追求する中で、軍備への投資はますます膨れあがりつつある。「世界終末時計」はいつのまにか残り85秒(2026年1月時点)を指していた。
国連のグテーレス事務総長は26日の安全保障理事会で「世界中で法の支配がジャングルの法則に取って代わられつつある」と危機感を込めて語った(NHKなど)。
日本は歩む方向を決める選挙戦のさなかだ。私たちの子孫に対する責任が問われている。








