近代日本国家と天理教の時局対応…金子昭著
天理教には「時旬」という思想がある。親神の啓示や働きがそれにふさわしい時期に為されることを指し、その延長で時代の局面つまり時局との間で迎合、齟齬、緊張関係も持つこともある。総力戦、敗戦へと至る教団の時局対応を、本書はそうした信仰の背景を踏まえ分析、批判する。
本書で研究の対象とされるのは明治40年代から昭和20年代にかけての約40年間。1907(明治40)年に天理教の本席だった飯降伊蔵が死去し、著者によれば「教祖みき以来続いてきた神の啓示が完結」して、教会本部中枢の人々の運営で「時局」に対応する体制になった。天理教にとっても国策協力の境目の「三教会同」は12年のことである。
「教育勅語」に基づく国民道徳運動、国体護持のための思想善導、治安維持法体制下の当局との協調姿勢、戦後における大転換、教団体制の建て直し、という教会の「時局対応」の歩みを本書はたどる。第4章「『特高月報』『思想月報』に見る天理教」は国家の宗教管理の実態を示し、政府の過剰なまでの「干渉的姿勢」と教会の過剰なまでの「従順的姿勢」が読み取れる。
世界各地で紛争、戦争が起き、日本も決して無関係でないという展望が見える中、時局と「時旬」が改めて問われる。
定価6600円、法藏館(電話075・343・0458)刊。






