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大阪万博と大阪・関西万博(1/2ページ)

和光大講師 君島彩子氏

2026年1月13日 10時52分
きみしま・あやこ氏=総合研究大学院大文化科学研究科博士後期課程修了。専門は宗教学、宗教美術史、万博学。国際日本文化研究センター博士研究員、日本学術振興会特別研究員を経て現職。博士(学術)。「現代の『マリア観音』と戦争死者慰霊」で第15回中外日報社涙骨賞、学位論文「平和祈念信仰における観音像の研究」で第15回国際宗教研究所賞・奨励賞を受賞。著書に『観音像とは何か――平和モニュメントの近・現代』(2021年、青弓社)。監修した展覧会に「万博と仏教――オリエンタリズムか、それとも祈りか」(23年)など。
2025年万博の閉幕

2025年、大阪・夢洲で万博が開催された。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げ、技術革新のみならず生命・環境への配慮を前面に据えた点に特徴がある。木造の大屋根リングに囲まれた各国パビリオンの中心には「静けさの森」が設けられ、自然と共生する未来像を象徴的に示していた。では、この2025年万博を、同じ大阪で半世紀以上前に開催された1970年大阪万博と比較してみよう。

70年万博と仏教界

70年の大阪万博では、歴代日本開催万博の中でも最も仏教が前面に出た。直前の67年モントリオール万博の日本館が自動車や家電など製品展示に偏り、「商品見本市」と批判された一方で、仏像などを展示したタイ館や韓国館の評価が高かった。

この反省もあり、大阪万博では仏教展示が重視されたと考えられる。特に象徴的なのが日本政府による日本館の歴史展示であり、飛鳥・奈良時代の展示には法隆寺「百済観音」模造や五重塔模型を円筒形ケースに収め、鐘の音を響かせる空間演出を施した。平安期は寺院堂内の暗がりを再現し、密教の曼荼羅や縁起絵巻を展示、鎌倉・室町期は禅庭を覗き込む構成となった。

さらに万国博美術館「聖なる造形」では実物の仏教美術が多数展示された。自治体館や企業パビリオンでも仏教的要素が散見された。企業館で最も仏教的であったのは、東大寺七重塔を高さ86㍍で再現した古河パビリオンである。未来的パビリオンが並ぶ会場で、日本的象徴として強い存在感を示し、海外メディアでも「日本らしさ」の代表として紹介された。内部は最新技術展示であったが、東大寺の僧侶による法要も行われた。

休憩所提供の経緯

万博協会は当初、モントリオール万博のキリスト教館を参照し、日本の諸宗教を扱う「宗教パビリオン」を計画し、日本宗教連盟に参加を要請した。しかし同連盟は早期に不参加を決定。続けて万博協会は全日本仏教会、日本キリスト教連合会に出展を求めた。

キリスト教は合同パビリオンを出展したものの、68年末から社会派と教会派の対立で混乱しつつ会期を迎えた。会期中は毎日ミサが行われ、布教活動が行われた。さらに積極的に布教活動を行ったのはモルモン館である。氏名を記入した来館者に経典を配布し、さらに住所記入者には布教使が訪問を行っている。

全日本仏教会も当初は仏教館というパビリオン出展を構想し、檀那寺のデータをコンピューターで検索できる展示などの案も出されたが、3億円を超える費用の問題もあり、出展を中止した。

その背景には日本館や万国博美術館での仏教展示の充実、万博の公式ガイドブックでの京都・奈良の著名な寺院の観光案内などがすでにあることから、パビリオンで仏教を布教する意味が見出せなかったのだろう。その代わり費用の少ない施設参加として休憩所の提供を決め、万博協会はキリスト教館とのバランスを考慮し、仏教的意匠の休憩所を許可した。

こうしてモノレール西口駅近くに総檜造・宝形屋根の「法輪閣」が建立された。金剛組施工の本格的寺院風建築で、須弥壇には四天王寺本尊「救世観音像」の原型が安置され、壁面には各宗本山の写真が掲示された。

仏教音楽が流れ、生花が飾られ、全日本煎茶道連盟による無料接待も好評であった。仏教の教えのパンフレット配布も特例的に許可され、「日本仏教館」と報じられるほど、来場者にはパビリオン同様の存在として受け止められていた。法輪閣では超宗派の僧侶による法要が行われ、平和が祈られた。

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長らくご愛顧を賜りありがとうございました。(2025.10.1)
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