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分岐点の非核平和主義 共存の理念を忘れるな(1月28日付)

2026年1月30日 09時53分

日本人のノーベル賞受賞1、2番目の湯川秀樹、朝永振一郎両博士(共に物理学)らの著作『平和時代を創造するために』の巻頭に「核兵器の脅威から人類を守る目標は、他のどの目標よりも優先すべきだ」という意味に解される文章がある。先の大戦でナチス・ドイツに先んじた原爆開発を米国・ルーズベルト大統領に進言、後にそのことを深く後悔したアインシュタイン博士の言葉とされる。

大戦後、米ソの核軍拡が進み、米国は1954年ビキニ環礁で「ブラボー」と呼ぶ水爆実験を行った。広島原爆の千倍という威力に人類存続の危機感を抱き、核廃絶運動を起こした科学者らが原点とした言葉である。その理念は平和を核抑止力に依存する今の世界の倒錯ぶりを浮き彫りにする。

「ブラボー」は「第五福竜丸」の悲劇を生み、人々を「死の灰」の恐怖にさらした。実験後に出された有名な「ラッセル・アインシュタイン宣言」に湯川博士ら11人が署名、宣言に共鳴して57年にパグウォッシュ会議が、62年に科学者京都会議が発足した。

京都会議は84年の第5回まで活動した。第1回会議は被爆体験と戦争放棄の憲法を持つ日本は、世界平和に特別な貢献ができると主張。その上で、核抑止力政策は不安定な軍事情勢をもたらし、戦争廃絶に逆行する▽真の解決は核兵器を含む完全な軍備撤廃以外にない、などの声明を発表した。

ちなみに第1回会議は、ある企業の寮で開催予定だったが、突然使用を拒否され、天龍寺塔頭の慈済院に会場を変更し開かれた。

近年、世界の秩序が揺らぎ、武力行使にもためらいがない。昨年来、米ロ両国は「臨界前核実験」再開や新型原子力魚雷の実験成功を表明、中国も核弾頭を増やし、大国の核開発の駆け引きが続いている。

日本でも高市早苗政権の中枢部で国是の「非核三原則」見直し発言や「核保有論」が聞かれ、連立を組む日本維新の会も衆議院選に向け米国との「核共有」の議論を始める考えを公表している。被爆者や「日本パグウォッシュ会議」などが強く抗議しているが、命軽視で「倫理敗北の時代」といわれる社会潮流の中、日本の非核平和主義は分岐点に来た感がある。

話を戻すと、湯川博士はモラルを重視し、前掲著作にも「(モラルを忘れて)細かい戦略論などに深入りしていると、いつの間にか妙な考えが正しいような錯覚を起こす」と記し、人類共存の根本に立ち返って国の安全を考えることが大切と強調している。実に今日的な警鐘ではないだろうか。

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