仏と冠婚葬祭…玄侑宗久・一条真也著
 
芥川賞作家として知られる僧侶と、冠婚葬祭互助会の経営者との異色の対談である。「僧侶と作家は二足の草鞋ではなく一足の重い草鞋」であり「両足」だと自任する僧と「佐久間庸和」の本名を名乗る経営者の顔とペンネームを使った作家活動や大学の客員教授などを務める多彩人が、多死社会、死との向き合い方、無縁社会、日本人の宗教観、葬式の問題点、法要の簡略化など、いのちの問題や現代社会と仏教、あるいは仏教と葬祭などについて語り合っている。
「多死社会」と呼ばれる現代を生きる私たちにとって、死は不幸なのか、という問いかけから対談は始まる。生き残った者が勝ち組で、死にゆく者は負け組なのか? そんなことはない。生き死には生の現実だが「有為の奥山」を超えた世界は「無為自然」である。冠婚葬祭とは目に見えない「縁」と「絆」を可視化するもの――など、死と葬祭を巡る様々な現実を仏教の知恵と視点から読み解いてゆく。
「仏教には無縁がない。この世は有縁社会である」と僧が言えば、冠婚葬祭のプロは「仏教は世界に誇りうるグリーフケア宗教である」と応じる。二人の対談は、我が国に伝わる葬祭文化の深層から、生の営みの意味を改めて問いかけている。
定価1320円、現代書林(電話03・3205・8384)刊。

 

 
 
 


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



