PR
購読試読
中外日報社ロゴ 中外日報社ロゴ
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
新規購読紹介キャンペーン

正義に殉ずるとは 映画「ボンヘッファー」で(12月3日付)

2025年12月5日 09時17分

現代キリスト教にも大きな影響を与えた神学者で、ナチスへの抵抗運動をし、ヒトラー暗殺計画に関わって処刑されたドイツの牧師ディートリヒ・ボンヘッファーを主人公とする米映画「ボンヘッファー」が反響を広げている。

神と人間の関係、倫理や人の信仰、生きざまについて数多くの著述を残した牧師の死後80年の年に公開された本映画は、幼時から終戦直前の刑死まで、時代の様々な状況に対応しながらその思考を深めてゆく彼の生涯をなぞる。

ファシズムに反抗したこんな牧師の存在を広く知らしめる意味で意義深いが「伝記」というには事実と異なる演出が多いという点に加え、一般的に「悪」に対して「正義」の行いはどうあるべきかという点で大きな論議を呼ぶ。

映画で「暴走車にひかれた犠牲者に包帯を巻くだけでなく、運転手からハンドルを奪ってでも車そのものを止める」との趣旨から「罪」である暗殺を受け入れる牧師の描き方が、米国で以前の議事堂襲撃や移民排斥など自分たちの偏った主張のために暴力も厭わない一部の福音派宗教右派、トランプ大統領支持者から熱狂的賛同を集めているというのだ。

「正義」の履き違えも甚だしいが、それは牧師を「孤高の英雄」とも取れるような映画の描き方にもよる。これは、主観的に設定した「極悪非道の敵」、古い西部劇では先住民、戦前戦後は「ナチスドイツ」や「東側」、挙げ句は宇宙人や「ゾンビ」まで動員して、敵を抹殺し尽くす「孤高のヒーロー」が喝采を浴びるステレオタイプのハリウッド映画の流れでもある。

しかし現実の彼は違う。各国を回ってエキュメニカル、そして他宗教との対話にも尽くした国際人であり、研究でも抵抗運動でも幅広い仲間の連帯の輪の中にいた。神を支えとしたそれを自ら「善き力たち」と表現したように、決して「孤独な殉教者」ではなかった。

本作を巡るトークセッションでそれを指摘したボンヘッファー研究者の岡野彩子氏が強調するように、宗教的にさらに重要なのは、葛藤の末に決断した彼が決して人間の基準で自己正当化をせず、罪の責任を負う覚悟を持ち、後はどんな判断を下すかも分からない神に全てを委ねた点だ。

戦争や抑圧が絶えない現代でも、正邪の見極めとそれに基づく行動選択は単純ではない。戦前の日本でも、軍国主義に迎合する教義の意図的な“履き違え”が横行した。宗教者にとってのこの映画の真価は、いかに現実世界を見据え、信仰の深みで真に正しい道を示すかを考えさせるところにあろう。

年賀状の効用 人との繋がりを保つ秘訣(1月14日付)1月16日

最近、年賀状じまいをしたという声をあちこちで聞く。実際、日本郵便による年賀はがきの発行枚数は、2004年用の約44億6千万枚をピークに減少する一方だ。本年26年用は約7億…

災害で問われる この社会の人権感覚(1月9日付)1月14日

思い返すと1995年1月の阪神・淡路大震災は、大地動乱の時代を告げる災害だった。また「人の救済を真剣に考えなければ、社会の真の復興はありえないという社会的自覚が生まれた災…

平和の理念見失うな 国際法の下での世界秩序(1月7日付)1月9日

アメリカ軍は3日、ベネズエラを急襲して大統領夫妻を拘束し、ニューヨークに移送した。いくら“世界の警察”を自認するアメリカであろうと、一国の大統領を拉致して自国の裁判にかけ…

西国三十三所第2番札所の救世観音宗総本山紀三井寺(和歌山市)

日本遺産条件付き認定へ 西国・会津の両観音霊場 地域の連携不足を指摘 地元寺院から制度に違和感の声も

ニュース1月19日
クラス対抗のクイズ大会も行われ、会場は盛り上がった

駒込学園100周年祝う 中高生徒、教職員ら1700人 式典で天台声明や部活パフォーマンス

ニュース1月19日

不正利用実態把握へ 文化庁宗務課、予算計上し調査 法人売買・脱税など悪用対策

ニュース1月16日
「墨跡付き仏像カレンダー」の製造販売は2025年版をもって終了いたしました。
長らくご愛顧を賜りありがとうございました。(2025.10.1)
中外日報社Twitter 中外日報社Facebook
このエントリーをはてなブックマークに追加