緊張続く日中関係 仏教交流の意味に期待(12月5日付)
台湾有事に関する高市首相の一連の国会答弁を発端に、日中双方が相手国の大使を呼んで抗議するなど、両国の関係がこじれてしまい、現在に至るまで改善の見込みが立たない状況が続いている。とくに強硬なのは中国側であり、観光などでの日本渡航に事実上の制限をかけ、そのあおりで日中間の民間交流にも中止や延期が相次いでいる。一方、韓国では中国人観光客の急な増大でオーバーツーリズム問題が起こり、反中国デモが激化しているという報道もある。
こういう時こそ、宗教間交流の出番である。10月中旬、中国の北京で第25回中韓日仏教友好交流会議が開催され、3カ国の仏教界代表者約300人が参加した。この会議は1993年、中国仏教協会長の趙樸初氏が訪日して、日中韓は仏教という「黄金の絆」で結ばれていると述べたことに始まり、95年に第1回会議が北京で開かれてから今年で30周年の節目を迎える。
ただ、宗教間交流にも過去に苦い経験がある。毎年、日中韓の宗教関係者で開催しているIPCR(宗教平和国際事業団)国際セミナーが、2019年に日本で開かれた際、中国側が突然参加を辞退したのである。辞退の理由は、日本の一部の宗教関係者が香港の民主化デモに賛同したことであった。
宗教が国家の統制下にある中国では、民主主義国には考えられない厳しさがある。公認されているのは五つの宗教(仏教、道教、天主教[カトリック]、基督教[プロテスタント]、イスラム教)だけであり、これらは国家宗教事務局が監督している。中国当局は、民族独立運動とも絡んでチベットやウイグルの自治区での仏教やイスラム教の動きに警戒しており、キリスト教に関しても外国からの影響に神経をとがらせている。当局は反体制運動につながるという理由で宗教をリスク視し、これは「宗教リスク論」とも称せられるものである。
しかし、だからと言って、宗教界、仏教界までもが中国をいたずらにリスク視すべきではない。どの宗教にも普遍的な人道主義と平和主義の教えがあり、この教えに基づいて宗教関係者は対話と交流を相互に働きかけることが一層求められるだろう。中韓日仏教友好交流会議でも、趙樸初氏が述べた「黄金の絆」を再確認し、「改めて初心を忘れず共に未来を切り開く」という共同宣言を採択したばかりである。こういう時期だからこそ、日中韓の仏教界、とりわけ日本の仏教界が率先して融和と安定のために働きかけることに期待したい。






