「暫定協定」
カトリックの上海教区で15日、新しい補佐司教の叙階式が行われた。バチカンと中国政府の間では司教任命の「暫定協定」が2018年に締結されており、教皇庁報道室はその枠組みで呉建林氏を補佐司教に任命したと発表した◆ごくあっさりした人事リリースで、同氏の略歴も(全国政協委員は除いて)付されている。しかし、これには習近平政権の重要政策になった「宗教の中国化」に関わる複雑な背景がある◆「アジア・ニュース」によると、補佐司教はバチカンの関与しない形で半年前に選出されていた。報道室はレオ14世は8月11日になって彼を候補として承認したという。暫定協定は内容非公開だが、その趣旨の蹂躙ではないのか。2年半前、中国天主教愛国会副主席の沈斌氏が上海の正司教に就任した経緯も想起させる。教皇フランシスコが沈司教を承認したのは3カ月後だった◆フランシスコは「外交好き」を自認した教皇だった。暫定協定締結も彼らしさがよく表れているが、批判も根強くあった。元香港司教の陳日君枢機卿は教皇を激しく攻撃した◆レオ14世は前任者を継承し、ウクライナやパレスチナの和平問題でも存在感を示す。だが、「宗教の中国化」を強行する習政権との外交交渉はどうか。地下教会だけでなく国交のある台湾の問題も視野に粘り強い交渉を強いられるだろう。(津村恵史)






