被災地の秋
秋の訪れは遅かったものの、道すがら目に入るセイタカアワダチソウ(背高泡立草)は今年も景色を鮮やかな黄色に染めた。この植物は明治期にもたらされた北米原産の外来種で、根から「アレロパシー物質」を出し、周囲の植物の生育を抑えて増殖する少し厄介な存在だ◆アレロパシーはギリシャ語でアレロン(互いに)と、passionの語源でもあるパトス(情熱)の合成語で、ある植物が放出する化学物質が他の植物に良い影響を与えたり、忌避させたりすることだ。セイタカアワダチソウの場合は在来種のススキなどを駆逐する◆しばらく前に、石川県の金沢と能登をつなぐ高速道路「のと里山海道」を走ると、以前には見なかった景色が広がっていた。両脇の休耕田がこの草で一面黄色に染まっていたのだ。被災によるものか後継者不足によるものかは分からないが、休耕田が至る所に見られ、元に戻るには時間がかかりそうだと思うと、胸が締め付けられた◆各地の被災地でも増殖するセイタカアワダチソウ。東日本大震災で事故が起きた福島原発の周辺でも当時、急速に増えたと報告されている。ただ、この野草は日本の環境では群生が必ずしも長続きせず、数年後には他の植物にとって代わられるという◆願わくば、被災地が早期に復興し、黄色い草原ではなく、かつての豊かな田畑として再び息を吹き返すことを――。(赤坂史人)





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