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政治参加と思想信条 「大衆福祉」の結党理念に期待

東京科学大教授 弓山達也氏

時事評論2025年10月28日 09時48分

10月10日の公明党の政権離脱には驚いた読者も多かっただろう。自民党総裁選に関連して、3日の『公明新聞』第1面には大きく「まず自公で政策合意」の文字が踊った。5日の同紙でも高市総裁選出を受け「自公で政策協議」と続く。『聖教新聞』も同様で、26年間、自民党との連立を維持してきた公明党のみならず、その支持母体である創価学会にとっても想定外の展開だったと思われる。

もちろん、この政策協議そのものに「政治とカネ」の問題にけじめをつけることが含まれていたのだが、これに対する公明党の本気度は予想以上に高かった。

筆者は政権離脱の前日に創価学会の若者6人と話す機会があった。「公明党の毅然とした態度が重要」と言ったところ、軽く受け流された。彼らをはじめ公明党支持層にとっても自公連立は自明で、今回のことは信じがたい出来事だっただろう。

創価学会は生命尊厳の思想を根本に、人類の幸福と社会の繁栄、世界平和の実現を目指して運動を展開してきた。その社会的活動の一環として、「大衆福祉」を掲げて公明党が結成され、教団からの支持は強固で、社会への影響力は大きい。

しかし、その「力」に違和感や警戒感を抱く向きが少なくないことも事実だ。特に選挙の際の投票依頼には戸惑いを覚える声がたびたび聞かれる。「政治とカネ」問題を象徴する一人とされた議員が昨年の衆院選で出馬した東京24区(創価大学をはじめ教団施設が多い地域)を思い出してほしい。裏金問題の関与を理由に自民党非公認、公明党も推薦しなかった件の議員に公明党支持者の65%が投票したのだ(『朝日新聞』調べ)。

このように創価学会・公明党が標榜する理念と、実際の投票行動や政党間関係にはしばしば乖離が見られる。具体的な選挙場面では、現実政治との折衝や戦略的妥協もあるのだろう。

ただ、政治とはそういうものだという達観でもない限り、投票者は何か心のさざ波を感じたに違いない。それとも上からの指導に疑問を持たず従うのか。だとすると現場ではどんな指導がなされているのだろうか。そこに先の違和感や警戒感を覚えるのは、ごく自然なことだといえる。

斉藤鉄夫代表は12日の『聖教新聞』のインタビューに答えて、「何よりも「大衆とともに」との立党精神に立ち返り、「公明らしさ」をどうやって発揮していくかを追求していきたい」と述べている。今回の離脱をきっかけに、公明党が改めて原点である「大衆福祉」の結党理念に立ち返り、政治的駆け引きより倫理的原則を重視する道を模索することを期待したい。

本稿をしたためている今も首相指名選挙に向けて政党間の調整と混乱が続いている。しかしその過程で各党の政策や理念が明確になることは、むしろ歓迎すべきことかもしれない。そして自ら信じるところを明確にすることは政党や宗教団体に限られることではない。有権者一人ひとりが思想信条や良心に即して、政治参加することこそ民主主義社会には必要なのだ。公明党の政権離脱をきっかけに始まる議論は、私たち有権者にも原点を問い直す貴重な契機となるであろう。

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