ユニット型ケアの普及 高齢者施設にこそ宗教者を(10月17日付)
特別養護老人ホーム(特養)では、従来は大半が主に4人の部屋(多床室)だった。だが、近年では各入居者に個室を提供するユニット型ケアが増えてきた。この方式では、10人程度のユニットごとに共有のリビングスペースがあり、入居者は個室とリビングを自由に出入りできる。また、職員もユニットごとに配置され、多床室よりも少人数単位で行き届いたケアができる。厚生労働省の後押しもあって、今後はユニット型ケアが主流になるとされる。
高齢者施設にはサービス付き高齢者住宅(サ高住)や住宅型有料老人ホームなど各種あるが、いずれも個室が基本である。個室があってこそプライバシーも確保され、家族も訪問しやすいし、何よりも個別のケアが受けられるというメリットがある。こうした個室化の流れが特養にも広がってきた。
特養が終の住処である以上、そこで入居者は最期を迎えることになる。多床室の従来型では、終末期に初めて安静室等の名称の個室に入り、職員や家族に看取られて亡くなる。ユニット型ケアでは、自室で最期を迎えるが、各人の部屋がある故に逆に入居者同士の交流も深まりやすいので、終末期にも同じユニットの人を訪問したり、最期の見送りにも立ち会ったりすることができる。
各個室は入居者が好きなように使うことができる。部屋にはそれぞれの信仰する宗教の小さな祭壇や仏壇が置かれて、礼拝や読経をしていることもある。多床室ではなかなかそうはいかないが、これもユニット型ケアならではの宗教面のメリットと言えるだろう。しかし、宗教的ニーズは潜在的にあるのに、職員は介護や看護にそれぞれ忙しいため、そうした宗教面でのケアまで及ばない。
宗教施設が設立母体の特養もあり、そこにはその宗教の祭儀を行う部屋もあったりするが、入居者は様々な信仰的背景を持っている。そうした時、一人一人の宗教ニーズに対応し、こまやかに対応するスタッフも必要ではないだろうか。臨床宗教師の出番も、もしかしたらこういうところにあると思われる。
ただ、その場合、ある程度高齢の宗教者であることが望ましい。なぜなら、自らもまた同じ高齢者であるからこそ、高齢者の気持ちがよく分かり、親身に寄り添うことができる側面を有するからである。寺院や教会を次代に譲った僧侶や教会長が臨床宗教師として、どのような宗教ニーズにも対応することができれば、入居者も安んじて最期の時を過ごすことができるであろう。