生命とAI
膨大なデータを基に「人間よりも文章などをうまく書ける」といわれる生成AI。文学界ではAIの使用は既に当たり前で、AIで作った小説も出版されている◆全日本仏教徒会議大阪大会のシンポジウム(6日)で、識者がAIと生命について議論する一幕があった。人間の脳には神経細胞をつなぐ何兆個ものシナプスがあり、その結合と消滅によって省エネでの創造が可能となる。だがAIが同様の働きを模倣するには莫大なエネルギーを要する◆生物学者の福岡伸一氏は、AIはエントロピー増大の法則に反すると指摘した。生物は体内のエントロピーを捨てるために自ら壊して作り直す「動的平衡」で生きているという。AIは蓄積する一方であり、死ぬこともない◆社会の効率化や豊かさを目指して開発されたAIは医療や金融、教育など様々な分野で不可欠になった。その進展の裏側では膨大な電力消費が伴う。データを保存する巨大施設の維持にも多大なコストがかかり、2030年には世界の電力消費量が倍増し、その半分をデータセンターが占めるとの試算もある◆AIに「世界の消費電力が増えたら」と問うと「気候変動リスク、経済格差、インフラ負荷が悪化する」とその危うさを回答した。利便性や効率性の追求に偏るのではなく、持続可能性や倫理的な視点をもってAIと向き合うことが大切ではないか。(赤坂史人)